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天啓異聞録 の実話:明末期の史実をわかりやすく解説

中国ドラマ『天啓異聞録(てんけいいぶんろく)』(原題:天启异闻录)は、明朝末期・天啓帝の時代を舞台にした全12話のサスペンス時代劇です。

天啓異聞録は実話ではありませんが、舞台になっている天啓年間の明朝、魏忠賢の専横、錦衣衛の存在などは実在の歴史に基づいています。

一方で、怪病や人体実験の島、怪物の描写などはドラマ独自の創作です。

この記事では「どこまでが史実で、どこからが創作なのか」を、明時代の歴史の流れとあわせて整理します。

 

この記事では

  • 主人公の所属する錦衣衛とその背後はどんな勢力なのか?
  • いつ・どこでどんな政治状況の話なのか?
  • 韃靼武人やポルトガル人がなぜ出てくるのか?
  • “怪病”は史実とどう関係しているのか?

といった時代背景と史実との関係をわかりやすく紹介します。

ドラマの詳しいあらすじやネタバレには踏み込まないので、ネタばらしされたくない方も安心して読んでくださいね。

 

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『天啓異聞録』はどんなドラマ?

『天啓異聞録』は

明末の政治不安と疫病不安を背景にした、怪異ホラー寄りサスペンス時代劇

です。ロマンス中心の宮廷劇ではありません。

中国ドラマ『天啓異聞録』は明朝末期・天啓帝の時代を舞台にした全12話の短編サスペンス時代劇。

皇帝直属の秘密警察・錦衣衛に属する褚思鏡(ちょ・しきょう)が、遼東の辺境で起きた怪病騒ぎと弟の失踪の謎を追うところから物語が始まります。

 

舞台は後金との最前線にあたる遼東・寧遠とその沖合にある孤島・烏暮島(うぼとう)。
人が突然姿を消す「怪病」や人とは違う姿に変わった怪物の噂が広がり、褚思鏡は韃靼(モンゴル)出身の武人・伯顔(バヤン)、ポルトガル人女性艦長アンジェリカらと手を組みながら島に隠された秘密と朝廷の思惑に迫っていきます。

実在した明朝の天啓帝の時代を舞台にしているのですが。華やかな宮廷ものやラブ史劇とは違い。

  • 明末の政治的な行き詰まり

  • 疫病への恐怖

  • 国境地帯の不安定さ

という王朝自体が滅亡のカウントダウン段階に入ってます。その不安な時代を怪物・人体実験・陰謀といった形で目で見て分かる形でデフォルメした作品といえます。

というわけで。

ドラマを楽しむなら、ラブ史劇でも歴史再現ドラマでもなく明朝末期の詰んだ世界観をベースにしたホラーアクションサスペンスとして見るといいな。と思います。

 

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天啓異聞録は実話なのか?史実との違いは?

天啓年間の明朝末期という時代設定

ドラマの舞台になっているのは明がじわじわ追い詰められていく「末期的症状」に陥ってる中での国境最前線・遼東が舞台です。

天啓3年=明滅亡の少し前

物語が始まるのは天啓三年(1623年)ごろの遼東。明滅亡が1644年ですから、滅亡まであと21年しかありません。

天啓帝(てんけいてい/朱由校)は明の第16代皇帝。在位は1621〜1627年と短め。政治には関心がなく、朝廷の実権は宦官の魏忠賢(ぎ・ちゅうけん)に握られ文官たちとの対立が激化していました。

この時代の明は、
  • 国庫は苦しく

  • 党争と粛清が続き

  • 北方ではのちに清となる後金(こうきん)が軍事的な脅威として絶賛勢力拡大中。

というかなり追い込まれた状況です。
ドラマの天啓3年は、
「明はまだギリギリ持ちこたえているが、崩壊に向かうカウントダウンが始まっている時期」
です。

遼東=後金と向き合う国境防衛ライン

ドラマの主な舞台となる遼東(りょうとう)は現在の遼寧省東部〜北朝鮮国境あたりに相当する地域です。明にとっては、

  • 後金と直接向き合う国境防衛ライン

  • 兵士・移民・地元民・モンゴル人など、さまざまな人々が入り混じって暮らす国境のごちゃごちゃした地帯。

という位置づけでした。

作中で名前が出てくる寧遠城は実在する城。烏暮(うぼ)島は架空の島ですが。遼東沿岸には砦や密貿易の拠点になった島があり。それらをモデルにしていると思われます。

明朝末期の遼東と寧遠城付近の様子。明・後金・モンゴルの境界線を示す図

天啓年間の遼東付近の様子

上の地図で示したあたりでしょう。

遼東の厳しい寒さといつ戦争になってもおかしくない緊張感のある場所。そのまったただ中で怪病と怪物騒ぎが描かれます。

 

「ここは明と後金の最前線なんだな」と意識して見ると、軍人たちのピリつき具合や、補給・疫病への不安がよりリアルに感じられます。

 

錦衣衛と宦官政治:褚思鏡の危うい立場

主人公の褚思鏡は錦衣衛で中央から地方に派遣された役人です。

彼は褚思鏡は皇帝直属の特務官であると同時に魏忠賢の手下として警戒される存在です。

 

錦衣衛とは?明王朝の“秘密警察”

主人公・褚思鏡は皇帝直属の秘密警察として恐れられた錦衣衛(きんいえい)の一員です。

錦衣衛はもともと明の皇帝が自らの身辺警護と情報収集のために設けた親衛隊・諜報機関でした。
  • 皇帝直属で文官の官僚機構とは別ルート

  • 逮捕・取り調べ・監視・密告の取りまとめまで担当

  • 時には拷問や秘密裁判も行なったと伝わる

 

宦官・魏忠賢の専横と東林党弾圧

ドラマでも魏忠賢の名前は出てきます。彼は皇帝以上に権力を握る宦官です。天啓帝は政務に熱心ではなく、実際の権力は宦官・魏忠賢の手に集中していきます。

  • 天啓帝の寵愛を背景に宮中人事や軍事・財政まで介入

  • 反対する官僚(とくに東林党系の学者官僚)を徹底的に粛清

  • 自分を讃える祠が各地に建つほどの「暴走モード」

という、明朝末期でも屈指の“黒幕ポジション”です。

『天啓異聞録』の世界では、褚思鏡は「魏忠賢の人間だ」と自分で名乗る錦衣衛という設定で登場します。つまり、形式上は「皇帝直属」でも、実質的には魏忠賢の私兵に近い立場に置かれているのです。

 

明末は本当に疫病が多発していた

史料を振り返ると万暦年間末期から崇禎年間(16世紀末〜17世紀前半)にかけて明の領内では何度も大規模な疫病が発生しました。

  • 北方〜北京周辺で広範囲の瘟疫(多くは鼠疫系と推測)

  • 軍営で集団感染し、部隊が壊滅した例も複数あり

  • 戦争・飢饉・寒冷化が重なり、流行は全国各地に波及

 

特に崇禎年間の「大疫」は史書にも残っており、軍事的な敗北と政権崩壊に大きな影響を与えた要因のひとつとされています。

つまり、

“明末=疫病の時代”というイメージ自体は、しっかり史実に根拠がある。

のです。

 

「傷寒」という病名とドラマのリアリティ

劇中でも診察シーンで「傷寒(しょうかん)」という言葉が出てきますが、これは古典医学でかなり幅広く使われた病名です。

  • 現代で言うチフス系

  • 腸チフスに近い高熱疾患

  • インフルエンザや敗血症、原因不明の急性熱病の総称

などをひとまとめに「傷寒」と呼ぶことがよくありました。

当時の医者が“よく分からない熱性疾患”をまとめて「傷寒」「傷寒様」と呼ぶのは自然なことで、

「遼東の軍中で“傷寒”と呼ばれる疫病が流行する」

というのはは充分にありそうなできごとです。

 

寧遠の傷寒を錦衣衛が調査した事件は実話なのか?

でも。

「寧遠で発生した傷寒を、錦衣衛が捜査のため派遣された」

という、そのままズバリの史実は確認できません。

史料には、
  • 寧遠城の戦闘や遼東防衛線

  • 明末の疫病の大流行

 
についての記録は多いものの「錦衣衛が疫病調査の特使として動いた」という記録は見当たらないようです。

つまり、

“明末疫病” × “寧遠” × “錦衣衛の特務”

という組み合わせは、明末の状況から想像した作り話。といえます。

当時の錦衣衛は
  • 世間を混乱させる怪しい噂

  • 反乱・陰謀

  • 地方の不穏な事件

  • 天変地異・怪談・妖書の調査

などにしょっちゅう動員されていたので、疫病がらみの怪事件を調査する錦衣衛というシチュエーション自体はいかにもありそうな嘘のつき方だと言えます。

 

作品の怪病描写は、どこまで実話でどこから創作?

史実寄りの要素

  • 明末に疫病が頻発していた

  • 軍営が感染で壊滅するケースがあった

  • 医師が「傷寒」と呼ぶ高熱症状が多かった

  • 疫病=天意・天変・災異と結びつけやすい明末のメンタリティ

完全創作の要素

  • 人が怪物化するような症状

  • 島全体が変異した“黒い力”の存在

  • 地下施設・人体実験的モチーフ

  • 黒鹮(ヘイフアン)などの秘密組織が疫病を操作する描写

まとめると、

『天啓異聞録』の“怪病”は明末の疫病史をベースに、SFと怪異ホラーを掛け合わせた作り話。

として作られた作品といえると思います。

 

「全部が作り話」ではなく、疫病まみれの明末の不安感を脚色したものとして見ると、怪物描写にも別の意味が出てきます。
 
要素 史実 ドラマ『天啓異聞録』
時代背景 天啓帝の治世末期、明朝が衰退しつつある時期 おおむね史実どおりの時代設定
魏忠賢 宦官として実在し、天啓年間に絶大な権力を振るった 権力者としてほぼ史実に近い人物像で描写
錦衣衛 皇帝直属の捜査・弾圧機関として実在 アクション要素を強めた演出が加えられている
怪病・怪物 史料には見られない創作設定 人体実験や怪物の存在はフィクション

 

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褚思鏡・伯顔・アンジェリカは実在する?

褚思鏡:魏忠賢派の錦衣衛

褚思鏡は架空の人物です。でも彼が所属する錦衣衛は実在しますし。魏忠賢が権力を持っていたのも事実です。

褚思鏡は皇帝からの特命を受けた特別捜査官。単身で辺境に派遣され。軍や地方官の頭越しに直接「怪病の真相」を探る人物です。

とはいえ褚思鏡本人は本気で悪の手先になってるわけではありません。

  • 表向き:魏忠賢配下の錦衣衛として、怪病と失踪事件の調査に赴く

  • 本音:行方不明の弟を探し、真相を知りたいという個人的な動機

  • 現実:遼東の軍人や地方官からは「魏忠賢の犬」と警戒され、板挟みになる

という、かなりグレーなポジションに立たされています。

褚思鏡の置かれた立場は。

・皇帝直属の特務機関としての錦衣衛
・その錦衣衛を私物化する宦官・魏忠賢
・その中で動く褚思鏡という一人の人間

というものだと覚えておくと。褚思鏡の行動や、軍人たちが見せる警戒心・反発がドラマ上の都合というではなくて、明朝末期の歪んだ社会を表現しているのだと分かると思います。

「褚思鏡は誰のために動いているのか?」という視点で見ると、ただの怪物退治ではなく、サスペンス的な面白さが見えてきます。

 

伯顔:明に韃靼出身の武人はいたのか?

明末の遼東防衛では、漢人兵だけでなく、投降・帰順したモンゴル系(韃靼)の騎兵が明軍に組み込まれていました。

 

「もとは北方遊牧民の出身だが、今は明軍に属して国境を守る韃靼武人」

という伯顔の設定は、歴史的にはかなり現実味があります。

明軍内部にモンゴル系武人が混じっているのは、むしろ明末の国境地帯らしい光景と言えます。

 

アンジェリカ:明近海にポルトガル人艦長はいたのか?

16〜17世紀の明はマカオにポルトガル人居留地を認め、マカオ経由で火器や銀の取引を行っていました。

そのため「マカオを拠点に中国沿岸で取引するポルトガル商人」自体は当間のように実在します。

ただし「ポルトガル国王の密命を受けた女性艦長が、怪物の力を狙って極秘任務に赴く」というアンジェリカ設定は、完全なドラマ的創作です。

ポルトガル人が明末の海に現れるのはリアル、キャラクターとしてのアンジェリカ像はフィクション寄り、と整理すると分かりやすいと思います。

詳しくはこちらの記事で解説しています。
天啓異聞録:アンジェリカは実在する?なぜ中国時代劇にポルトガル人?

 

よくある質問

Q. 天啓異聞録は実話ですか?

A. 明朝の天啓年間を舞台にしていますが、実話ではありません。天啓帝や魏忠賢、錦衣衛などは史実に登場しますが、怪病や怪物の設定はドラマオリジナルです。

Q. 魏忠賢はドラマのように権力を持っていたのですか?

A. はい。史実でも天啓年間に朝廷を牛耳るほどの権力を持っていましたが、ドラマでは悪役として性格描写が誇張されています。

 
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まとめ :『天啓異聞録』は明末入門+怪異サスペンス

『天啓異聞録』は、明末の歴史をそのまま再現する作品ではありませんが、

  • 天啓帝と魏忠賢の宦官政治

  • 遼東・寧遠という国境戦線

  • 韃靼(モンゴル)武人が明軍に属する多民族フロンティア

  • マカオ拠点のポルトガル商人と海禁のグレー運用

  • 明末を襲った疫病と「傷寒」のイメージ

といった要素をかなりうまく拾っているドラマです。

こうした歴史的な背景を知ってから見ると、

  • 褚思鏡がなぜあんなに疑われるのか

  • 伯顔がなぜあの立場にいるのか

  • どうしてポルトガル人女性艦長が登場するのか

  • なぜ「怪病」と「天意」が結びついて語られるのか

といった点が、わかりやすいと思います。

「明末ってどんな時代?」の入門編としても楽しめる怪異サスペンスなので、
歴史好きの方はもちろん、ドラマきっかけで明末史に興味を持った方にもおすすめの一本です。

 

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この記事を書いた人

歴史ブロガー・フミヤ

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京都在住。2017年から歴史ブログを運営し、これまでに1500本以上の記事を執筆。50本以上の中国歴史ドラマを視聴し、史実とドラマの違いを正史(『二十四史』『資治通鑑』など)に基づき初心者にもわかりやすく解説しています。

詳しい経歴や執筆方針は プロフィールをご覧ください。

運営者SNS: X(旧Twitter)

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