慶恭皇貴妃 陸氏｜嘉慶帝の育て親の生涯

慶恭皇貴妃 陸氏 は清朝の第6代皇帝・乾隆帝けんりゅうていの側室。

一般には慶妃、慶貴妃として知られます。

「瓔珞＜エイラク＞」では慶妃・陸晩晩
「如懿傳」では陸沐萍　として登場します。

普通、皇貴妃は皇后の代理を務めるものが任命されます。

ところが慶妃はちょっとかわった理由で皇貴妃になりました。令妃の息子・永琰（後の嘉慶帝）の養母になったことで、嘉慶帝から皇貴妃の称号を贈られました。

史実の 慶妃 はどんな人物だったのか紹介します。

慶恭皇貴妃 の史実

どんな人？

清王朝の第６代皇帝・乾隆帝の時代です。

日本では江戸時代になります。

家族

出身と生い立ち

陸氏は1724年に普通の漢人の家庭に生まれました。父親の陸士隆は朝廷の役人ではなく、一般的な庶民だったようです。

宮廷入り

陸氏がいつ宮廷に入ったのかは正確にはわかっていません。

お妃を選ぶ「八旗選秀」や「内務府選秀」といった制度で選ばれたわけではなく、別の経路で宮廷に入ったと考えられます。

一説には宮廷に入る前に役所で働いていたという話もあります。

入宮時期

陸氏が宮廷に入った時期は乾隆帝の治世下7年から12年の間の出来事と推測されています。

乾隆帝の側室になる

慶恭皇貴妃 陸氏 の肖像画

1748年（乾隆13年正月）。24歳で常在（下級の側室）になりました。10代で入宮する人が多い中で、20代半ばは年齢が高い方です。

4月。貴人になりました。

1751年（乾隆16年正月）。乾隆帝は陸氏を慶嬪にすると命令。手続きが行われ6月正式に慶嬪になりました。

1760年（乾隆24年）。慶妃になりました。

1760年（乾隆25年）。乾隆帝の南巡に同行しました。皇太后、皇后、令貴妃も一緒でした。

永琰（嘉慶帝）の養母になる

令貴妃の出産と永琰の誕生

1760年（乾隆25年）10月、乾隆帝の寵愛を受けていた令貴妃が第15皇子・永琰（後の嘉慶帝）を出産しました。令貴妃はこのころ頻繁に子供を産んでおり、子育てに追われていたようです。

永琰の養育を慶妃に託す

一方、慶妃にはまだ子供が生まれず令貴妃とは親しい間柄でした。そこで令貴妃は自分の息子である永琰の養育を慶妃に託すことを決めます。

二人の関係

• 年齢差: 慶妃は令貴妃よりも3歳年上でした。
• 地位: 令貴妃の方が寵愛を受けており、地位は令貴妃の方が上でした。
• 養母としての慶妃: 乾隆30年よりも前。つまり永琰がまだ幼い頃に慶妃は養母となっていたと考えられます。

永琰を慶妃が育てることになった理由

• 令貴妃の多忙: 多くの子供を産み育てていたため、永琰の面倒を十分に見ることが難しかったと考えられます。
• 慶妃との親密な関係: 令貴妃は、信頼できる友人であった慶妃に永琰を託すことを決めたのでしょう。
• 慶妃に子供がいないこと: 子供を深く愛する気持ちを持っていた慶妃は、永琰を自分の子供のように愛情を注ぎ育てたと思われます。

令妃の昇進と後宮の勢力図の変化

乾隆30年。寵愛を受けていた令妃が皇貴妃に昇格。後宮で最も高い地位に立ちました。

その後、令皇貴妃は仲の良かった令妃を貴妃に昇格させました。清朝の規則では同時に貴妃になれる人数は2人まで。令皇貴妃と慶貴妃の2人が貴妃になったので他の者は貴妃になることができなくなりました。

容妃の悲劇

このころ、乾隆帝は容妃を寵愛していました。容妃は令皇貴妃や慶貴妃が亡くなるまで貴妃になることはできませんでした。

容妃の美貌や魅力は後宮で大きな話題となり、香妃のモデルになったとも言われています。しかし後宮の厳格な序列と、他の妃たちの存在があったので容妃は思うような地位を得ることができませんでした。

慶妃の昇進と新たな展開

乾隆33年5月、慶妃のもとに平常在平氏が配属され、彼女の教育を任されることになりました。これは、慶妃が将来、より高い地位に昇進する可能性を示唆する出来事でした。そして同年10月、慶妃はついに貴妃に昇格します。

慶妃の晩年と最後

乾隆33年5月。慶妃のもとに平常在平氏が配属され、彼女の教育を任されることになりました。

同年10月、慶妃はついに貴妃に昇格します。

しかし華やかな地位を得た慶妃は、晩年、病気によって苦しむことになります。乾隆帝は慶妃の病気を深く心配して良医を招いて治療させるとともに、静かな環境で療養できるよう西花園での生活を許可しました。

乾隆39年7月。慶妃は静かな西花園で生涯を閉じ、享年51歳でこの世を去ります。

彼女の遺体は静安荘に移され、生前彼女が世話をしてきた皇子たちが葬儀に参列しました。

翌年の乾隆40年、慶妃の棺は清裕陵に埋葬されました。

嘉慶帝と慶恭皇貴妃（陸氏）の深いつながり

即位と父の影

1760年、顒琰（永琰から改名）は乾隆帝から譲位され、嘉慶帝になりました。

ところが父親の乾隆太上皇帝が健在であったため、嘉慶帝は権力を握ることができず父の意向に従う日々が続きました。

父の死と親孝行

嘉慶4年（1799年）。乾隆太上皇帝が崩御。

嘉慶帝はようやく自分の思うように政治を行うことができるようになりました。嘉慶帝はかねてより慕っていた養母の慶貴妃の地位を上げることを決意します。

これは、亡くなった父への孝行の思いから出た行動であったと考えられます。

慶恭皇貴妃への昇格

嘉慶帝は、勅命の中で「慶貴妃は我が養母であり、生母同然の存在である」と述べ、慶貴妃に「慶恭皇貴妃」の称号を贈ることを宣言しました。この称号は、皇后に次ぐ非常に高い地位で嘉慶帝が慶貴妃をどれほど敬愛していたかが伺えます。

陸氏の生涯と「もしも」

慶恭皇貴妃（陸氏）は、嘉慶帝にとって実の母親同然の存在です。その愛情の深さは尋常ではありませんでした。もし陸氏がもう少し長生きしていれば、皇太后と同等の扱いを受けていた可能性も十分に考えられます。

まとめ

嘉慶帝は養母である慶恭皇貴妃（陸氏）を深く敬愛し、その死後もその功績を称え続けました。

二人の絆は、親子という枠を超えた、特別なものであったと言えますね。

テレビドラマ

瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜

2018、中国
役名：陸晚晚　　演：李若寧

主人公・魏瓔珞は後の令皇貴妃。ドラマでも瓔珞から信頼され子育てを任されます。史実と違うのは八旗選秀で選ばれて側室になったこと。

如懿傳〜紫禁城に散る宿命の王妃～

2018、中国
役名：陸沐萍　演：于洋

崇慶皇太后の手下となってスパイの役目をします。乾隆帝によって子供を産めない体になってしまいます。こちらのドラマでは令貴妃 魏氏が主人公・烏拉那拉如懿の敵なので陸氏は敵方の役になります。