穎貴妃 バリン氏・モンゴル出身の妃は十七皇子永璘の養母

穎貴妃（えいきひ）は清朝の第代皇帝・乾隆帝けんりゅうていの側室です。

「瓔珞＜エイラク＞」では　穎妃・巴林（バリン）氏
「如懿傳」では巴林·湄若　穎貴妃・巴林·湄若として登場します。

穎貴妃は乾隆帝の側室の中では若いほうです。

穎貴妃は名家の出身ですが。他に影響力のある側室が何人もいたので目立つ存在ではありませんでした。

子供はありませんでしたが、令貴妃の産んだ第１７皇子・永璘をひきとって育てました。

史実の穎貴妃はどんな人物だったのか紹介します。

穎貴妃　の史実

どんな人？

清王朝の第６代皇帝・乾隆帝の時代です。

日本では江戸時代になります。

家族

穎妃（巴林氏）の生涯

モンゴルの名門出身

穎妃こと巴林氏は、モンゴルの名門バリン氏出身の女性です。

バリン氏は、チンギス・ハンを支え、モンゴル帝国の建国に大きく貢献した一族であり、大元でも重臣を出しました。

清朝においてもその名声は高く、蒙古八旗の一角を担っていました。

宮中に入る

巴林氏は1731年に生まれました。

父は蒙古鑲紅旗人の長官・納親（ナチン）。

八旗選秀を経て清の宮廷に入ります。

八旗選秀は満州八旗、蒙古八旗、漢軍八旗の女子の中から皇后や妃嬪を選ぶ制度で、巴林氏もその選抜を勝ち抜き、乾隆帝の側室の一人になったのです。

宮中での地位の変遷

穎妃 バリン氏 の肖像画

宮中に入った巴林氏はまず常在に、そしてすぐに貴人に昇進します。

その後、穎嬪、穎妃と順調に地位を上げていき、後宮で重要な役割を担うようになります。

特に穎妃は宮中の後輩の教育にも熱心で、穎妃のもとで宮中の規則を学んでいた女子が武常在に昇進するなど後輩の育成にも力を注いでいました。

和碩和嘉公主の病気と死

穎妃は後宮での地位だけでなく他の皇族との関係も良好でした。

特に乾隆帝の娘・和碩和嘉公主とは親しく、和碩和嘉公主が重病になったときにには他の妃嬪たちとともに看病に当たりました。

しかし和碩和嘉公主の容態は悪化。最終的に23歳という若さでこの世を去りました。穎妃は和碩和嘉公主の死を深く悲しみ、その喪失感を乗り越えなければなりませんでした。

穎妃と永璘、そして固倫和孝公主の物語

第17皇子 永璘の養母になった穎妃

永璘の生母 令皇貴妃が亡くなり、まだ幼かった永璘を誰が育てるかという問題が起きました。

そこで子供のいなかった穎妃が永璘の世話を引き受けました。。穎妃にとって永璘を育てることは、心の支えになったようです。

熱河への旅と思わぬ出来事

年月が流れ、穎妃は成長した永璘とともに乾隆帝の娘・固倫和孝公主と夏の避暑地である熱河へ行くことになりました。熱河は現在の内モンゴル自治区にあたり、清の皇帝たちが暑さを避けて過ごした場所です。固倫和孝公主は病気療養を兼ねてこの地を訪れたのでした。

ところが穎妃たちが熱河へ向かう途中、大雨が降り橋が壊れてしまうというハプニングが起こりました。

そのため、しばらくその場所で足止めを食らうことになってしまいます。

乾隆帝の心配と決断

このことを聞いた乾隆帝は、娘の固倫和孝公主と穎妃が長い旅になったことを心配しました。しかし病気療養のためには、このくらいのんびり過ごすのも良いのではないかと考えました。

そして壊れた橋を修理させ、水が引いた後に二人を宮廷に戻すよう指示を出しました。

嘉慶時代。穎貴妃の晩年

乾隆帝の譲位と穎妃の転居

乾隆帝が嘉慶帝に譲位し太上皇になると、穎妃はそれまで住んでいた景仁宮を離れ、永壽宮に移りました。

穎妃から穎貴妃、穎貴太妃へ

1798年、乾隆太上皇は勅命を出し、穎妃の位を穎貴妃へと昇進させました。

これは穎妃が長年乾隆帝に仕え、信頼を得ていたことへの報いと言えるでしょう。さらに同年10月には嘉慶帝から穎貴太妃の尊称を授かり、穎妃は後宮における最高位の女性の一人となりました。

乾隆帝の死去とその後

1799年（嘉慶4年）。乾隆帝が崩御すると穎貴太妃は夫の死を悼み喪に服しました。

乾隆帝の死後も、穎貴太妃は後宮で重要な役割を果たし続け、その高い地位と影響力を維持し続けたと考えられます。

70歳の誕生日が台無しになった話

1800年。穎貴太妃は70歳という大きな節目を迎えました。

この年の夏。永璘は母親同然に育ててくれた穎貴太妃の誕生日を盛大に祝うため、様々な贈り物を用意。華やかな式典を開きました。

永璘は幼い頃から生母を亡くし、穎貴太妃に深い愛情を注いでもらっていたため心の底から感謝の気持ちを表したかったのです。特に子供に恵まれなかった穎貴太妃は永璘の心のこもった祝い事に大変喜び、寂しい日々を少し忘れられたことでしょう。

しかし、この出来事を聞いた嘉慶帝は激怒しました。嘉慶帝は永璘が自分にも知らせずに勝手に大規模な誕生日会を開いたことに、大変不快に思ったのです。

すぐに永璘を呼び出した嘉慶帝は「なぜ私に内緒でこのようなことをするのか」と厳しく叱りました。

永璘の心からの思いとは裏腹に誕生日会はすっかり興ざめ。楽しいはずの祝いの場は、緊張感に包まれてしまいました。

穎貴太妃の最後

穎貴太妃はその年に死亡しました。享年70歳。

テレビドラマの穎妃

瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜

2018、中国
役名：穎妃・巴林氏　　演：劉璐

ドラマの中では目立つ存在ではありません。

如懿傳〜紫禁城に散る宿命の王妃～

2018、中国
役名：穎貴妃・巴林·湄若　演：張佳寧

魏氏と仲が悪く、ヒロイン烏拉那拉·如懿の味方です。

天命

2018、中国

役名：穎貴太妃　演：盧宛茵

嘉慶帝時代のドラマ。主人公は重臣の和珅（ヘシェン）。穎貴太妃はこのドラマではわりと目立つ役です。このドラマでは嘉慶帝によって自害に追い込まれます。