中国ドラマ「瓔珞(エイラク)紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃(原題:延禧攻略)」では金瞳が話題になりました。
愉貴人の生んだ第五皇子・永琪が黄色の目をしているというので、高貴妃は不吉な「金瞳」だと騒ぎ出しました。「金瞳」は不吉な色。子供は間引かれ、それを産んだ者も処刑されるといいます。
永琪の場合は目だけではありません。全身が不気味な色だったのでよけいに騒ぎが大きくなりました。
でも、数は少ないものの金瞳は実在します。
ではなぜ金瞳が不吉とされたのでしょうか?
それは中国の迷信が関係していました。
金瞳とは何か?なぜ不吉とされたのか?第五皇子は本当に金瞳だったのか?について紹介します。
瓔珞:金瞳とされた第五皇子
中国ドラマ「瓔珞(エイラク)紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃」では、愉貴人の生んだ第五皇子・永琪が黄色の目を持って生まれたため宮廷内で大きな騒動を巻き起こしました。
高貴妃は永琪の目を「金瞳(きんどう)」と呼び、不吉なものとして処刑されなければならないと主張しました。
永琪の場合は目だけでなく全身が黄色みがかった色をしていたので、より一層不吉な存在として扱われました。
当時の人々はこのような異常な外見を持つ子供を災いを招く存在として恐れていたと考えられます。
なぜこのような考えがあったのでしょうか?
金瞳(きんどう)とは?
金瞳・金眼・ウルフアイ様々な呼び方
金瞳(きんどう)とは、まるで黄金のように輝く瞳のことを指します。その美しさから多くの人々を魅了する一方で、その珍しさから神秘的な存在としても語られてきました。
光の当たり方によっては金色に輝いて見えるため、金眼と呼ばれることもあります。
欧米ではその瞳の色から「狼の目(Wolf eyes)」とも呼ばれることがあります。
金瞳の正体:メラニンと黄色い色素の織りなす色彩
アジア人、特に日本人の多くは茶色の瞳を持っています。瞳の色は虹彩に含まれるメラニン色素の量で決まります。メラニン色素が多いほど瞳は濃い色になり、少ないほど明るい色になります。
金瞳と呼ばれる瞳の色は、医学的にはアンバー(琥珀)色に分類されます。メラニン色素が少ない虹彩に、黄色い色素が混ざり合うことで生まれます。
黄色い色素の種類は動物によって違いますが。人間の場合はリポフスチンの作用で黄色く見えます。
金瞳を持つ人々:日照量の少ない地域に多い?
金瞳を持つ人はとても少なく、地球上の人口の約5%と言われます。しかも多くは欧米人に見られ、アジア系には少ないです。
基本的にはメラニン色素の少なさが原因なので高緯度地域に住む人に金瞳が多いです。日照量の少ない地域では紫外線から目を守るメラニン色素が少なくても生きていけるからです。
金瞳を持つ動物たち:夜行性に多い?
金瞳は人間だけでなく動物にも見られます。むしろ動物の方が多いです。猫や狼など夜行性の動物に多く、鳩、猛禽類など鳥類にも金色の瞳を持つ種類があります。
欧米で金瞳を「狼の目(Wolf eyes)」と呼ぶのも狼や動物に多いからです。
金眼が不吉とされた理由
金眼(きんどう)は、数は少ないものの自然界にも存在する瞳の色です。
でも中国では金眼は不吉なものとして扱われ、処刑の対象となることさえありました。なぜなのでしょうか?
1. 異質なものへの恐れ
古代中国では「金瞳」は自然には存在しない瞳と考えられていました。
また中国の伝統的な文化では身体に人と違う特徴があると不吉や異端のしるしとみなされてきました。
そのため金瞳は「普通ではない」「異質である」という認識が生まれやすかったと考えられます。
2. 霊的な力への連想
古代より世界各地では淡い色の瞳を持つ者は「霊が見える」とか「霊的な力を持つ」とされることがよくありました。
ヨーロッパでは青い瞳は高貴な瞳とされたのも淡く青い瞳が神秘的で霊的なものとつながっているように見えたからです。
3. アジア圏の特殊性
様々な瞳の色を持つ人が暮らすヨーロッパでは民族によって瞳の色が違うことはありました。
でも東アジア圏では違います。ほとんどの人が茶色の瞳を持ちます。茶色の瞳が「普通」になりすぎると、違う瞳の色は「人以外の者」「普通とは違う邪悪なもの」と考えられました。「金瞳は妖魔の子」という中国の迷信もその一つです。
4. 中国の迷信
中国の伝統的な文化では、人と違う特徴を持つのは不吉や異端の兆候とみなされてきました。
金瞳は非常に珍しいので「普通ではない」「異質だ」という認識が生まれやすかったと考えられます。
伝説や物語の中では金瞳を持つ者は妖怪や神仙など、人ではない存在として描かれることもあります。金瞳を持つ者は妖魔や異人種といった「人間ではない者」とみなされ、恐れられていました。
金瞳は動物や北方の異民族に多いです。儒教や華夷思想の強い中国人にとっては、動物や異民族に似た目をしているのはそれだけで差別や怖れの対象になりやすいという事情もあります。
中国人は文化的で偉い。周辺の民族は遅れている野蛮人。という差別的な考え方。古代からありましたが宋代にとくに強くなりました。
そのため例え妖怪や異人種でないことがわかっていても「金瞳を持つ者は不吉」と思われるようになったと考えられます。
5. 社会不安
当時の中国社会では迷信的な考え方が強く、金眼を持つ子供は家族や周囲の人々に不幸をもたらすと信じられていました。
そのため、そのような子供を排除することで災いを未然に防ごうとしたと考えられます。また皇帝の権威を守るため、不吉な存在とされる子供を排除する必要もあったと考えられます。
「瓔珞」の第五皇子は金瞳ではなかった
中国ドラマ「瓔珞(エイラク)」では第五皇子は「新生児黄疸」と診断され「金瞳」ではないことがわかりました。
新生児黄疸とは
新生児黄疸は血液中のビリルビンが増加することで起こります。ビリルビンは赤血球が壊れるときに生成される黄色い色素です。普通はビリルビンは肝臓で処理されて体外に排出されます。でも新生児は肝臓の発達が未熟なため、ビリルビンが過剰に蓄積されることがあります。
新生児黄疸の症状
新生児黄疸の主な症状は目や皮膚、全身が黄色くなることです。黄疸の程度によっては白目が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりすることもあります。
新生児黄疸の経過と治療
新生児黄疸は、生後10日くらいで自然に正常に戻ることが多いと言われています。しかし、ビリルビンの量が多すぎると、脳に残って学習障害や運動障害を引き起こす可能性があります。そのため、新生児黄疸の症状が見られた場合は、医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
ドラマ「瓔珞」の描写
劇中では第五皇子の目が黄色く見えたことから、高貴妃が「金瞳」だと騒ぎ立てました。でも実際には新生児黄疸でした。劇中でも医師の治療で治り。第五皇子はその後は無事に育っています。
なお第五皇子が「金瞳」と騒がれるのはドラマの演出。史実ではそのような騒動はありません。
ただ、そういう迷信があったのは確かです。
金瞳は個性・不吉ではない
歴史的にみれば普通のヒトとは違う身体的特徴をもった人は、並外れて優れた人か異常な人かのどちらかにされてしまいます。でも外観で人の能力や性格が変わるわけではありません。
ただの迷信です。
「普通じゃないものは排除する」という人間の性質がそうさせているのですね。
現代では金瞳はその人の持つ個性です。個性は尊重されるべきであり、迷信的な理由で差別があってはいけません。ドラマの描写を真に受けないようにしましょう。
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