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天啓異聞録:アンジェリカは実在する?なぜ中国時代劇にポルトガル人?

『天啓異聞録』を見ていて一番「え、どういう歴史設定?」となるのが、
ポルトガル人女性艦長アンジェリカの存在ではないでしょうか。

明朝末期が舞台の中国時代劇なのに、西洋式の大砲を積んだ船でポルトガル人艦長が登場し、怪物を追ってくる。

一見するとファンタジー設定に見えますが、「明末」という時代に目を向けると、実はかなり“歴史に寄せた盛り方”になっています。

この記事ではでは、

  • アンジェリカは実在の人物なのか
  • なぜ中国時代劇にポルトガル人が出てくるのか
  • どこまでが史実ベースで、どこからがドラマ的創作なのか

をわかりやすく紹介します。

 

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アンジェリカは実在しないが「ポルトガル人がいる明末の海」はリアル

最初に結論からまとめるとアンジェリカという人物は実在しない完全にドラマの創作キャラクターです。

ただし「明末の中国沿岸にポルトガル人商人が出入りしていた」という歴史背景は事実です。

マカオを拠点に、中国人海商と組んで貿易を行うポルトガル人はいました。

つまり、

「ポルトガル人艦長が明末の海にいる」という状況歴史的にはかなり自然。

ただしアンジェリカ個人の経歴や“怪物ハンター”的な役割はドラマならではの創作です。

 

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ドラマのアンジェリカはどんな人物?

ドラマのアンジェリカはどのような人物でしょうか?

「黒き海龍号」の艦長という戦う商人

アンジェリカは、作中に登場する武装船
「黒き海龍号」を率いるポルトガル人の女性艦長です。

  • 俳優:張榕容

  • 立場:ポルトガル王国の命令を受けた商人兼艦長

  • 性格:大胆で頭の回転が速く、必要とあれば冷酷な判断も下す

という時代劇としてはかなり異色のキャラクターです。

怪物を追う“極秘任務”の担い手

アンジェリカは普通の火器商人ではありません。

  • 国王から「怪物」を捜索する密命を受けている

  • 賀子礁からの情報で怪物が烏暮島に潜んでいると知る

  • 明朝にフランキ砲を提供する見返りとして、烏暮島への上陸許可を獲得する

という、「軍事技術(大砲)と情報を交換材料に、明朝の許可をもぎ取る交渉人」として動いています。

 

怪物の力と向き合う西洋人

ドラマが進むとアンジェリカは怪物の正体やその背後にある黒い力に迫っていきます。

  • 当初は「怪物の力を自国のために利用できないか」という思惑も持っている

  • しかし調査を進めるうち、その力が制御不能な破壊性を持つことを悟る

  • 最終的には、その危険性を理解し、安易な利用を断念する方向へ傾いていく

「異能を兵器として利用したい西洋側」と
「制御不能な力の恐ろしさを思い知る人間」という二面性を持つ役どころです。

敵か味方か分からないが、最後には協力する

アンジェリカは沈譲とは敵対関係にありますが、
物語がクライマックスに近づくと、褚思鏡らと利害が一致する場面が生まれます。

  • 普段は、自分の利益と任務を優先する“危険な協力者”

  • 危機的状況では、褚思鏡たちと同じ側に立ち、横公に対抗する

という、単純な悪役でも完全な仲間でもない、
「状況次第で頼れる外部勢力」として描かれます。

 

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海禁しているのに、なぜポルトガル人が来られるのか

歴史にちょっと詳しい人なら「明は外人の出入りには厳しかったのでは?」と思うことでしょう。

明朝は基本的に「海禁」と呼ばれる政策を掲げていました。建前としては、

  • 勝手な海外渡航・私貿易は禁止

  • 外国との取引は朝貢貿易(公式ルート)のみ

という、かなり閉鎖的な方針です。

でも現実には、
  • 中国沿岸には海商・密貿易商人・海賊(倭寇ふくむ)がたくさんいた

  • 沿海の役人も、賄賂と引き換えに密貿易を黙認することが多かった

というグレーゾーンだらけの世界でした。

江戸幕府の「鎖国」が港と相手国・取引する人まで細かく管理した「制度設計された閉鎖」だとすれば。

明の海禁は

「とりあえず禁止と言っておくけれど、実際は抜け道だらけ」

という、かなりグダグダな運用だったと言えます。

結果として、

政策の上では「海禁」だけれど、実態としては外国商人が出入りし、密輸や半分非合法の取引が行われていた

というのが、明末の海の姿です。

 

かつて16世紀に日本とのトラブルがきっかけで海禁のグダグダ運用を修正しようと密輸を厳しく取り締まりったことがあります。ところが生活の手段を奪われた海の商人たちが武装化し、いわゆる第二次倭寇として暴走します。倭寇と呼ばれていますが、その大多数は中国人でした。

 

ドラマの時代はそれに凝りて海禁をかなり緩くしている段階です。

 

マカオとポルトガル商人:明とヨーロッパの接点

16世紀にポルトガル人が中国沿岸に現れると、やがてマカオ(澳門)に居留地を持つようになります。ここを拠点に、彼らは
  • 中国 ⇔ 日本

  • 中国 ⇔ 東南アジア各地

  • ヨーロッパ ⇔ アジアをつなぐ中継貿易

で大きな利益を上げていました。
明側も、マカオ経由で
  • 香料・ぜいたく品

  • そして大砲や火縄銃などの火器

 
を手に入れており、とくに明末には対後金(のちの清)戦争のための火力強化として、ヨーロッパ式火器の導入が重要になっていきます。

なので、

「ポルトガル人商人がフランキ砲を持ち込み、その見返りに明朝から特別な許可を得る」

というアンジェリカの取引は歴史的にもかなりありそうな筋書きなのです。

 

「中国船+ポルトガル人商人」という混成チーム

種子島に鉄砲が伝来したときも、

  • 船は中国人の船主が所有するジャンク船

  • そこにポルトガル人商人が同乗していた

という形だったとされます。

実際の東アジア海域では、
  • 中国人海商

  • ポルトガル人・スペイン人などヨーロッパ系商人

  • 日本・東南アジアの航海者

といった人たちが同じ船・同じネットワークで動いていることが珍しくありませんでした。

『天啓異聞録』のアンジェリカも、

マカオを拠点に、中国人海商と組んで東アジアを巡る
「マカオ系ポルトガル人商人」

としてイメージすると、かなり現実の歴史とつながって見えてきます。

 

 

「ポルトガル人が出てくる中国時代劇」はおかしくない

ここまでをまとめると、

  • アンジェリカという人物は実在しない

  • しかし「明末の中国時代劇にポルトガル人が出てくる」こと自体は、時代背景として非常に自然

  • マカオ・海禁のグレー運用・南蛮貿易・火器導入といった史実を踏まえたうえで、
    怪物や極秘任務といったフィクション要素を乗せたキャラクター

と位置づけられます。

「なんで中国時代劇にポルトガル人?」と感じた方は、
明末の海が、実は

外国人も海商も当たり前のように入り乱れていたカオスな世界

だったことを思い出しながら見ると、
アンジェリカの登場がむしろ“時代の空気を象徴する存在”に見えてくるはずです。

アンジェリカの背後にあるマカオや南蛮貿易の歴史を知ってから『天啓異聞録』を見直すと、
彼女のセリフや交渉シーンにも、また違った奥行きが感じられると思います。

 

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この記事を書いた人

歴史ブロガー・フミヤ

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京都在住。2017年から歴史ブログを運営し、これまでに1500本以上の記事を執筆。50本以上の中国歴史ドラマを視聴し、史実とドラマの違いを正史(『二十四史』『資治通鑑』など)に基づき初心者にもわかりやすく解説しています。

詳しい経歴や執筆方針は プロフィールをご覧ください。

運営者SNS: X(旧Twitter)

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