中国ドラマ「琅琊榜(ろうやぼう)」は架空の王朝を舞台に繰り広げられるドラマです。
でもその背景には歴史的な事実が深く関わっていて南朝梁の時代がモデルになってます。
ドラマに登場する「琅琊」は、単なる地名ではなく、主人公が情報を集めるための組織や彼がかつて住んでいた場所を指す言葉として多様な意味を持っています。
この記事ではドラマ「琅琊榜」の世界を深く理解するために、以下の点について解説します。
- 琅琊の意味と歴史
- 南朝梁の歴史的背景
- 主要キャラクターのモデルとなった歴史上の人物
- ドラマと歴史のつながり
この記事を読んで琅琊榜をより深く理解し、ドラマの世界をより楽しんでみましょう。
琅琊榜の世界
物語の始まり
12年前、南梁の大同時代、北魏は南方侵略のために挙兵し、主人公・林淑は梁の紅炎軍の総司令官だった父に同行して戦いました。しかし味方の謀略のため、謀反人にされてしまい。梁帝は讒言を聞き入れ、討伐命令を出しました。
その結果、林淑の父と7万人の兵士が葬られました。
主人公・梅長蘇の目的
ドラマはその12年後から始まります。林淑は梅長蘇と名を変え、江湖最大の武闘集団・江左盟の首領となっていました。彼は帝都に戻り、復讐と汚名返上すると同時に靖王の皇位継承を助けるのでした。
琅琊(ろうや)とは?
地名の琅琊
古代の中国山東省に「琅琊」と呼ばれる地名が存在しました。山東省から江蘇省にかけての地域を指す名前としても使われます。
琅琊は古くから文化や政治の中心地として栄えた地であり、その名には栄光と歴史が込められています。
琅琊閣(ろうやかく)
民間の情報を集める組織。対価さえ支払えば様々な情報を教えてくれます。
琅琊榜(ろうやぼう)
琅琊閣が発行する優秀な人ランキング。琅琊榜の1位に選ばると大変な名誉になり、誰もが採用したいと思うほど。
科挙がまだなかった漢王朝では基本は有力者の推薦で役人になります。有力者は評論家の出した評価を参考にすることもありました。
琅琊榜の設定は大げさですが、あながち作り話とはいえないところがあります。
琅琊榜の世界を深く知るための歴史背景
架空と現実が織りなすドラマ
中国ドラマ『琅琊榜』は架空世界の人物のお話ですが実在した国をモデルにしてリアリティを高めています。
劇中の「梁」は中国南北朝時代の南梁がモデル。
敵対する国もモデルになった国はありますが、史実とは違う名前で登場します。
南北朝時代という激動の時代
梁が存在した中国南北朝時代とはどのような時代でしょうか?
三国志の時代を終わらせたのは司馬氏の晋(西晋)でしたが。内乱と異民族の独立で滅亡。統一国家がなくなると、いくつもの国が乱立する時代を経て北朝と南朝に分かれました。
南方では漢晋の伝統を受け継ぐ漢人を中心とした王朝が存在。北方では遊牧民族が建てた王朝が存在。南北の王朝が対立した時代でした。
北朝の特徴
支配者層:北方から移民した匈奴(きょうと)、鮮卑(せんぴ)。チベット系の羌(きょう)、氐(てい)など様々な遊牧民が中心。彼らが逃げずに残った漢人たちを吸収。様々な民族が混ざりあって新しいタイプの人たちが誕生します。
北朝の分裂: 小さな国が争っていた十六国時代を北魏が統一。でも長続きせずに東魏と西魏に分裂。それも長く続かず東魏は北斉に、西魏は北周に変わります。
頻繁に戦争が起きて社会は安定しません。
北朝の王朝
- 北朝: 北魏、東魏、西魏、北斉、北周など
ドラマでは「北燕=北斉」「大渝=北周」が相当。
南朝の特徴
支配者層:晋王朝の内乱と様々な民族が独立して小国家が乱立。混乱を避けるため漢の文化を受け継ぐ貴族たちが南部に避難。彼らが中心になって国を作り、もとからいた豪族や民を支配しました。
南朝:北部と違い大規模な戦乱は少なく社会は安定していましたが。朝廷内では権力争いが頻繁に起きて政治は安定しません。頻繁にクーデターが起こり東晋→劉宋→斉→梁→陳と王朝交代を繰り返します。
南朝の王朝:
- 南朝: 東晋、劉宋、斉、梁、陳など
南北朝時代の特徴
- 時期: 5世紀初頭から6世紀末頃まで
- 短い歴史: 南北朝時代はわずか142年という短い期間しか続かなかったため、他の王朝や時代に比べてあまり知られていません。
- 南北分立: 北方遊牧民による北朝と漢人貴族による南朝が対立。
- 軍事力: 一般的に北方の王朝は軍事力に優れ、南方の王朝は文化的な発展が目立っていました。
- 政情の不安定さ: 頻繁な政権交代や内紛が繰り返され、政治状況は非常に不安定でした。
- 文化の交流: 北方遊牧民と漢人の文化が交わり、独自の文化が花開きました。
南北朝時代が歴史に与えた影響
南北朝時代は中国の歴史でも重要な時代で、様々な影響があります。
- 文化の多様化: 北部では北方遊牧民と漢人の文化が融合。後の国際的な唐の文化の基礎になります。
- 仏教の興隆: 北部と南部それぞれの地域で仏教が流行。中国や東アジア文化に大きな影響を与えました。飛鳥時代の日本が取り入れたのも南北朝の仏教です。
- 隋の統一: 南北朝時代を経て隋が中国を統一。新しい時代を切り開きました。
琅琊榜の舞台になる南梁の特徴
南梁は南北朝時代に南朝を代表する王朝の一つとして502年から557年まで栄えました。
南梁は502年、蕭衍(しょうえん)が斉を滅ぼして梁を建国。蕭衍は優れた政治家で文化人でもあり南梁を安定させ繁栄させました。
政治面
- 中央集権化の推進: 梁の武帝は、有能な官僚を登用し、中央集権化を進めることで安定した政治体制を築こうとしました。
- 仏教の保護: 武帝は仏教を深く信仰し、国家レベルで仏教を保護しました。多くの寺院が建立され、仏教文化が社会に根付きました。
- 地方豪族との対立: 地方豪族の勢力が強く、中央政府との対立がしばしば発生し、政治の安定を妨げる要因となりました。
文化面
- 仏教文化の隆盛: 仏教が国家的に保護されたことで、仏教文化が大きく発展し社会のあらゆる側面に影響を与えました。
- 文学・芸術の開花: 仏教文化の影響だけでなく文学や芸術も盛んになり、南朝文化の華やかさを象徴するような時代でした。
経済面
- 農業の発展: 江南地域の豊かな自然資源を背景に、特に稲作が盛んになり農業生産力の向上は経済の安定に貢献しました。
衰亡
- 侯景の乱: 内政の混乱や外圧が重なり、侯景の乱という大規模な反乱が起こり国力は大きく損なわれました。
- 陳への交代: 侯景の乱を契機に南朝梁は衰退。陳に取って代わられる形で滅亡しました。
ドラマ「琅琊榜」との関連
ドラマ「琅琊榜」の時代設定は南梁 武帝の治世の末期にあたります。ドラマの中では南梁の政治的な混乱や、文化的な発展、そして権力闘争といった歴史的な背景が物語に生かされています。
武帝 南朝梁の礎を築いた人物
ドラマ「琅琊榜」の梁帝のモデルは南梁の武帝・蕭衍(しょうえん)です。

南梁 武帝
蕭衍は南梁の初代皇帝で治世は南朝文化の黄金期とも呼ばれます。
蕭衍の功績
- 南朝梁の建国: 斉を滅ぼし、南朝梁を建国。
- 政治改革: 官僚制度の改革や律令の制定など政治の安定化に尽力。
- 文化振興: 仏教の保護や文学の振興など、文化的な発展を促す。
- 南朝文化の黄金期: 彼の治世下で、南朝文化は最盛期を迎えます。文学、書道、仏教など、様々な分野で優れた人物が輩出されました。
蕭衍の晩年
晩年は仏教に深く傾倒し、国政を顧みない傾向が見られました。
侯景の乱が起こり、南梁は動乱の時代へと突入していきます。
ドラマ「琅琊榜」が描く梁の世界
権力闘争と政治的陰謀
南朝梁は皇族や貴族たちの間で権力闘争が激しかった時代です。ドラマ「琅琊榜」でも、皇位継承を巡る争いや、側近たちの陰謀が物語の中心となっています。
都の金陵と建康
ドラマの舞台になる都の金陵は現在の南京。宋時代は金陵ですが、南梁時代は建康と呼ばれていました。
建康は南朝の政治、経済、文化の中心地として栄えていました。ドラマ内でも金陵は華やかで活気のある都市として描かれており、当時の建康の繁栄を彷彿とさせます。
南北朝時代の政治的不安定
南北朝時代は北と南で複数の王朝が興亡を繰り返す非常に混乱した時代でした。北部には北周・北斉という大きな勢力があり。周辺にも小さいながらいくつかの勢力がありました。
ドラマ「琅琊榜」でも外部勢力との対立や国内の危機が描かれています。このような政治的な不安定さは南北朝時代の特徴でドラマにリアリティを与えています。
琅琊榜の登場人物たち
ドラマ「琅琊榜」に登場するキャラクターは架空ですが。実在した歴史上の人物の影響をうけています。
梅長蘇:知略と策略の天才
- キャラクターの特徴:
- 卓越した知略と策略を持ち、多くの人々を操る天才的な戦略家。
- 温文儒雅な外見とは裏腹に、内に秘めた復讐心を抱いている。
- 歴史的なモデル:
- 三国時代・諸葛亮(しょかつりょう)。公式サイトでも「孔明を超える」と書かれており天才的な軍略は諸葛亮を意識しているのは間違いありません。
- 南北朝時代・韋叡(いえい)。梁の武帝時代に活躍した将軍。病弱で馬にも乗れませんでしたが、天才的な指揮能力を持ち。戦場での戦いでは何度も勝利しました。
- 前漢・李陵(りきょう):漢の将軍でしたが匈奴の大軍と戦って力尽き降伏。李陵は捕虜になっても匈奴に寝返るのを拒否していましたが。武帝は激怒して家族を処刑・李陵は裏切り者とされました。それを聞いた李陵は匈奴の将軍となって漢と戦いました。
- 彼の計略や人心掌握術は古代中国の名軍師たちが用いた戦略に通じるものがあります。
特定の人物がモデルではなく。天才軍師は諸葛亮。病弱な指揮官は韋叡。裏切り者にされ復讐するところは李陵など。様々な歴史上の人物の要素を組み合わせたキャラクターとして設定されています。
霓凰郡主:武勇と知性を兼ね備えた女性
- キャラクターの特徴:
- 武芸に秀で国を守るために戦う強い意志を持つ女性。
- 梅長蘇の信頼できる盟友で物語を支える重要な存在。
- 歴史的なモデル:
- 具体的なモデルはいません。
- 北朝~唐代の女性貴族。あるいは漢人社会よりも女性の地位が高く戦闘に参加することもあった遊牧民や鮮卑の女性に近いイメージです。
- あえていえば伝説の女性戦士・ムーランや、幼い息子の代わりに軍を率いた契丹の蕭太后。
靖王:正義感と誠実さを兼ね備えた皇族
- キャラクターの特徴:
- 誠実で正義感が強く、王位継承を巡る争いの中で梅長蘇の支援を受けながら成長していきます。
- 歴史的なモデル:
- 具体的なモデルはありません。
- 梅長蘇のモデルが諸葛亮なら劉備に相当する人物。皇太子(曹操)と対立、誉王(孫権)とは部分的に協力しつつも敵対するところも似ています。
- 時代の混乱の中でも信念を曲げないリーダー像を象徴。
まとめ:歴史とドラマの繋がり
ドラマ『琅琊榜』は架空の物語ですが南北朝時代の歴史的な背景を取り入れ、よりリアリティのあるドラマになっています。
物語は実在した南朝梁の歴史を参考に政治的な混乱や文化的な発展など、当時の様子がドラマに表現されています。
ドラマに登場するキャラクターも歴史上の人物からインスピレーションを得ており、より深みのある物語となっていますね。
ドラマを見るときにこのような歴史的背景を知っていると、もっと楽しめると思いますよ。
コメント