中国ドラマ『如懿伝(にょいでん)』には、史実には存在しないものの、物語を大きく動かす重要人物が登場します。それが侍衛・凌雲徹(りょううんてつ)です。冷宮の警護役として如懿と出会い、友情から恋心へと発展するも、報われぬ愛と波乱の運命に翻弄されていきます。
では、凌雲徹はどのような人物として描かれ、史実の制度とどのように関わるのでしょうか。本記事では、彼の劇中での経歴・恋愛関係・最期の場面を整理しながら、「実在しないが重要な架空キャラ」としての意味を解説していきます。
凌雲徹は実在したのか?
凌雲徹は、清朝・乾隆帝の時代に実在した人物ではなく、完全にドラマ『如懿伝』のために創作された架空のキャラクターです。
歴史資料や正史にはその名は一切登場せず、ドラマを盛り上げるための架空のキャラクターです。
ただし、彼が務める「侍衛」や「太監」といった役職は清朝の宮廷に存在しました。凌雲徹はそういったポジションにいた人物の代表的な人物と考えるといいかもしれませんね。
凌雲徹とはどんな人?
凌雲徹は漢軍旗下五旗に属する包衣出身。出自は高くなく、庶民に近い立場から宮廷に仕えました。外見は端正でがっしりとした体格を持ち、性格は誠実で忍耐強く、愛する人を黙って守り続ける一途さが特徴です。
でも現実的な権力を持たず、愛する女性を守り抜くことはできない。そんな“弱さ”を抱えた人物として描かれています。この「誠実さと無力さの同居」が、彼を視聴者にとって親しみやすく、また切ない存在にしているのです。
『甄嬛伝』との関連 ― 名前の由来
凌雲徹という名前は、『甄嬛伝』に登場する凌雲峰から借用されたとされています。二つの作品をつなぐ“遊び心”のある設定ですね。
ファンとしてはちょっと嬉しい仕掛けではないでしょうか。これで如懿伝が甄嬛伝とつながる作品と感じられる効果もあります。
劇中での経歴と地位の変遷
凌雲徹の人生は宮廷内の昇進と転落の繰り返しです。彼は宮殿を守る「侍衛」として仕えました。
ドラマでは初登場時は冷宮や坤寧宮を警護する役から始まり、御前藍翎侍衛へと昇進、着実に地位を築いていきます。
しかし衛嬿婉との関係や宮廷内の権力闘争に巻き込まれ、木蘭囲場での苦役に落とされたりするなど彼の運命は次第に暗転します。
そして極めつけは「侍衛から太監(宦官)にされる」という屈辱的な転落。命を懸けて仕えてきた武人が、生殖能力を奪われ宮廷の下働きへと堕とされる。この展開は強烈なインパクトがありましたね。
恋愛と人間関係
衛嬿婉との関係
凌雲徹の初恋の相手は衛嬿婉。彼女の家庭環境の不遇を気遣い、こつこつと金を貯めて支えようとしました。しかし衛嬿婉は乾隆帝に近づくことを選び、凌雲徹を振り捨てます。失恋に打ちひしがれた彼は深い心の傷を負い、その後の人生にも影を落としました。
如懿との関係
冷宮で出会った如懿とは、最初は友情で結ばれます。やがて凌雲徹の心は愛情へと変わっていきますが、身分も立場も違う二人が結ばれることはありません。彼の片思いはドラマを通じて「報われぬ純愛」の象徴となります。
乾隆帝との関わり
凌雲徹は忠実に乾隆帝へ仕える一方、后妃との関係が疑われ、つねに皇帝の猜疑心に翻弄されます。乾隆の賜婚で茂倩格格を妻に迎えるも、心は別の場所にあるため家庭も不幸なものとなりました。
海蘭との決定的な場面
如懿を守るため、最後は海蘭の手で命を絶たれる凌雲徹。しかし彼は海蘭の真意を理解し、自らの死を受け入れます。その際、衛嬿婉との証拠となる「紅宝石の指輪」を託し、物語を決定的に動かしました。
凌雲徹の最期と「紅宝石の指輪」
凌雲徹の最期は、如懿伝における大きな転機です。衛嬿婉と交わした紅宝石の指輪を海蘭に渡すことで、衛嬿婉の失脚を導きました。
彼の死は如懿を守るための犠牲でした。愛は報われませんが最後に残した行動が如懿最大のライバルでかつての恋人だった衛嬿婉を追い落とすきっかけになるのです。こ
のシーンは強烈に覚えていますね。凌雲徹は“悲劇のヒーロー”となったのではないでしょうか。
凌雲徹の人気と評判
凌雲徹は、その誠実さと悲劇的な結末からファンの間で非常に人気の高いキャラクターです。
中国のSNSや日本のレビューでも「彼こそ真のヒーロー」「報われない愛が切なすぎる」といった声が多く見られます。
#如懿伝 完走。すごいドラマ✨。完璧な配役、完璧なセット、完璧な伏線回収…。個人的には凌雲徹と如懿の物語として記憶すると思う。野望と悪意が渦巻く後宮で、凌雲徹の「男女の情を越えた思慕」は清らかで美しく、尊い。凌雲徹役の #経超 が素晴らしかった。このドラマでブレイク?目が離せない… pic.twitter.com/Z56Tmfrk8P
— 口羊 (@MissNineTokyo) September 10, 2024
ドロドロ、グチャグチャで腹黒い人物が多い中で、彼ほど潔く純粋なキャラはいないでしょう。架空ですが印象深いキャラでしたね。
「宮廷の諍い女(甄嬛伝)」の温実初との比較
実は同じシリーズの「宮廷の諍い女」にも似たキャラがいます。温実初です。
温実初とは?甄嬛を守る御医
『宮廷の諍い女』に登場する温実初(おん・じつしょ)は甄嬛を支え続けた御医(宮廷医官)です。
彼は甄嬛に恋心を抱っていました。一時は一緒に逃げようとまで言いました。でも彼女にその気持ちがないと分かると、その気持ちをぐっと抑え彼女の幸せを願い身を挺して守ろうとしました。
ところが沈眉荘から行為を持たれ、彼も彼女に好意を持ち。酒に酔った勢いで関係を持ってしまいます。
しかし甄嬛との仲を雍正帝から疑れてしまい、甄嬛を守るため自ら宦官となりました。
恋愛感情が忠義と絡み合い、愛を守るために男性としての尊厳を奪われるという、極めて残酷な運命をたどった人物です。
凌雲徹と温実初の共通点と違い
『如懿伝』の凌雲徹と『宮廷の諍い女』の温実初は、「愛や忠義が原因で宦官にされる」という点で共通点があります。どちらも主人公を支える理想的な男性像で、宮廷の争いに飲み込まれ、悲劇的な結末を迎えるのです。
でもその悲劇の意味合いには違いがあります。
- 温実初 → 恋愛悲劇型
愛する甄嬛を守るためにすべてを犠牲にし、自ら宮刑を選ぶ。 - 凌雲徹 → 忠義悲劇型
如意を守る忠義心と正義を貫いた結果、権力闘争の犠牲になり尊厳を奪われる。
宮廷ドラマで繰り返される「宦官化」という残酷なモチーフ
中国の宮廷ドラマでは「宦官にされる」というシチュエーションは宮廷の非情さを象徴するモチーフとして繰り返し描かれています。
権力闘争の中で男性が無力化される象徴
皇帝の疑念や后妃たちの策略によって、正義感のあるある人物さえ一瞬で無力化される。その究極の形が「宦官化」です。
女性主人公の孤独と重圧を際立たせる演出
如意や甄嬛に寄り添う「数少ない理解者」が失われることで、主人公はさらに孤独になり、後宮での戦いが一層過酷なものとなります。
歴史上の宦官制度をドラマ的に脚色した要素
実際の中国王朝には宦官制度や宮刑という罰が存在しました。でもドラマではそれを「愛や忠義を断ち切る強烈な演出装置」として使い、視聴者に強い印象を与えているのです。
まとめ:史実にはいないが、如懿伝を動かす象徴的キャラ
凌雲徹は史実に存在しない架空の人物です。
でも彼の誠実さや報われない愛。そして最後の犠牲は『如懿伝』を語る上で欠かせない要素となっています。
史実の清朝の制度をうまく利用して悲劇的なキャラクターをうまく演出していると思います。あるいみ架空だからこそできる演出と言えますね。
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