中国ドラマ 楽游原(らくゆうげん)は架空の大裕王朝を舞台に謀反によって国が混乱に陥る中、二人の英雄が立ち上がる物語です。
皇族・李嶷(シュー・カイ)と、女将軍 崔琳(ジン・ティエン)が対立しつつも互いの才能を認め恋に落ちます。しかし彼らを待っていたのは戦場よりも苛烈な権力争いと陰謀でした。
この記事では『楽游原』のあらすじと結末をネタバレ込みで徹底解説。戦いの始まりから二人の甘く切ない「楽游原の約束」、最後の陰謀を経てたどり着くハッピーエンドまでを紹介します。
『楽游原』あらすじ
前半(1~14話)
乱世の幕開けとケンカップルの出会い
大裕王朝を揺るがす大都督・孫靖(そんせい)の謀反から始まります。皇帝や皇族が次々に殺され国は大混乱に。第17皇孫である李嶷(りぎょく)は人質になった父・梁王を救い国を乱した孫靖を討つために辺境で兵を挙げます。
彼の最初のミッションは敵から兵糧を奪うこと。李嶷は単身、望州城へと潜入します。
宿命の出会い:李嶷 vs. 何校尉
望州城で李嶷が出会ったのは同じく反孫靖勢力である崔家軍(さいかぐん)の軍師、何校尉(かこうい)。彼こそが実は女将軍・崔琳(さいりん)でした。
二人は兵糧を巡って激しく争い李嶷は横取りされますが、機転を利かせて望州城を奪い取ることに成功します。
城を失った敵は李嶷と何校尉に和議を持ちかけますがその裏で殺害を企みます。互いに騙す気満々だった二人は、危機を察して軍営から逃亡。互いを出し抜こうとするものの、山賊に捕まったことをきっかけに李嶷が「こいつと駆け落ちするつもりだった」と嘘をつき一気に距離が縮まります。
二人は農民夫婦になりすまして並州へと向かう道中で、崔琳が背負ってきた過酷な過去を李嶷は知ることに。お互いの存在がどんどん大きくなっていくのでした。
知略戦と「楽游原の約束」
李嶷は水陸の要所 並州城と建州城を手に入れようと崔琳に共闘を持ちかけます。
二人は韓立の屋敷に潜入、機転と連携で次々と窮地を脱出。崔琳の正体がバレそうになると李嶷は「彼女は崔琳だ」とあえて誤解される作戦を取り、彼女をかばいます。
最終的に崔家軍は並州城を攻め落としますが兵糧は再び崔琳に横取りされます。それでも、敵対と協力、裏切りを繰り返す中で二人の関係は特別なものに。七夕の夜には「いつか二人で楽游原へ行こう」という甘くも切ない約束を交わします。
梁王の即位(14話)権力闘争の始まり
李嶷が濼陽城を手に入れたころ人質だった父・梁王は「倒れた」と見せかけて棺桶から仮死状態で脱出。
李嶷と崔琳は孫靖を倒すために都・西長京への潜入作戦を決行。しかし作戦中に飛び込んできたのは、梁王が濼陽城で皇帝即位を宣言したというニュースでした!
孫靖が警備を強化したため潜入作戦は急遽中断。李嶷と崔琳は花嫁行列に扮して城外へ脱出することになります。
中盤の激動:梁王即位と愛を試す策謀
李嶷の父が皇帝に即位した後、二人の関係は試練を迎えます。李嶷は崔琳に裏切られたと誤解して意気消沈。一方、命を狙われ負傷した崔琳は李嶷に保護されるものの二人の心はすれ違ったままです。
溝が深まる中、崔琳は毒針で李嶷を眠らせて脱走を試みますが、李嶷は彼女が本物の崔琳だと見抜いていたことを告白。ついに二人は心を通わせ約束の地「楽游原」で静かな時間を過ごします。
愛を確認した二人は同盟を結んで西長京を攻略、孫靖の反乱軍を撃破します。
しかし勝利の裏で李嶷は新皇帝から正当に評価されず、権力争いに巻き込まれます。さらに死んだはずの崔倚の養子・柳承鋒(りゅうしょうほう)が異民族と結託して現れ卑劣な策謀で崔琳との強制的な婚儀を企てます。
それでも李嶷と崔琳は試練を乗り越え、協力して孫靖の最後の拠点・峝関を制圧。孫靖は李玄澤を人質に取って抵抗しますが、崔琳は戦闘を続けついに打倒されました。
これで外敵との戦いは終わりますが、ドラマはより苛烈な王朝内部の権力闘争へと移っていくのです。
終盤戦:愛と権力、楽游原の結末
皇太子争いと揺れる愛(第25話~第30話)
崔琳は国のために李嶷を皇太子に推しますが、李嶷は亡き皇太子の約束を守り、甥の李玄澤を推そうと主張。二人の間に亀裂が入ります。
兄の李崍が崔琳との政略結婚を望む中、李嶷はもう一人の兄・李峻の殺人の証拠を掴んで告発。直後、崔琳が柳承鋒に誘拐される事件が発生しますが、李嶷は彼女を救い出し束の間の甘い時間を過ごします。
しかし崔琳の父・崔倚が李嶷を皇太子に推したため、二人の亀裂は深まります。追い打ちをかけるように柳承鋒と結託した李崍が刺客を使って李峻を殺害しようとしました。
崔家軍の解散と婚約(第31話~第34話)
李嶷は李崍を討ちますが戦友を失った悲しみに暮れます。それでも崔琳に背中を押され、ついに皇太子に就任しました。
しかし朝廷は10万の兵を持つ崔家軍の力を警戒して崔琳を妃にすることに猛反対。さらに崔倚に反逆の罠が仕掛けられます。
李嶷は父に無実を訴え最終的に皇帝は「崔琳を妃にする唯一の条件」として崔家軍の解散を要求。李嶷は二人を守る最善策だと受け入れますが、崔琳は反発します。しかし娘の幸せを願う崔倚が解散を決断。こうして李嶷と崔琳の婚儀が執り行われました。
最後の陰謀とハッピーエンド?(第35話~第40話)
崔家軍解散で心労を負った父を思い崔琳は東宮での新婚生活を素直に喜べません。その裏では良娣となった顧婉娘や死を偽装した柳承鋒らが暗躍しています。
病気の父が回復して李嶷とのわだかまりが解けたのも束の間、崔琳の命を狙う顧宰相と異民族の陰謀が発覚します。
李嶷は独断で城門を封鎖し行方不明になった崔琳を必死に捜索。最終決戦の場では仮死状態から蘇った崔琳と共に皇宮へ乗り込みます。そして全てを仕組んでいた真の黒幕、顧宰相を成敗。
全てが収束した後、李嶷は皇帝として即位。10年後、李嶷と崔琳は息子に恵まれ、共に理想の未来を歩み続けます。二人はついに心の中で約束した真の「楽游原」に辿り着いたのです。
『楽游原』の時代背景:内乱から権力争いへ
『楽游原』の舞台は「大裕王朝」という架空の国。
ただ衣装や使われている言葉(節度使など)の雰囲気から、中国史でいう唐王朝の後半から宋王朝にかけての激しい混乱期をイメージすると分かりやすいですよ。
ドラマはこの王朝が「国の崩壊」の危機に瀕したところからスタートします。
大混乱の始まり:皇帝殺しと「三つ巴」の戦い
『楽游原』のオープニングはとんでもない事件がきっかけです。
- 始まりは謀反:大裕王朝で国境を守っていた孫靖(そんせい)という男が大規模な謀反を起こし、なんと皇帝や皇太子を殺してしまいます。国は一気に混乱のどん底へ。
- 二つの救世主:この大きな危機に立ち上がったのが二つの強力な軍でした。
- 辺境を守っていた「鎮西都護軍」を率いる、皇族の李嶷(りぎょく)
- 精鋭部隊「崔家軍」を、男装の軍師として率いるヒロイン・崔琳(さいりん)
こうして孫靖の勢力と李嶷と崔琳がそれぞれの思惑で動く、三つどもえの激しい戦いが始まります。これがドラマの前半です。
戦いの真の敵:孫靖を倒してからが正念場
孫靖を倒した後も戦いは終わりません。本当の恐ろしさは国の外ではなく「王朝の内部」に潜んでいたからです。
- 親族間の泥沼:李嶷の腹違いの兄・李峻(りしゅん)らが、自分の父親を皇帝にしてしまい。さらに皇太子になろうと李嶷と争い始めます。李嶷は外の敵だけでなく血を分けた親族とも殺し合う運命を強いられます。
- 朝廷の中枢では顧宰相が権力を握りますが、それだけでは満足できません。やがて李嶷を裏切ります。
- 北方の掲碩族は大裕を脅かす存在でした。顧宰相らは掲碩ともつながり己の野望を実現しようとします。また掲碩族は崔家軍にとっても宿敵です。
『楽游原』は外の戦いから王朝の内側に潜む人間の欲望と策略が渦巻く、愛憎劇へと展開していくところが最大の特徴です。
李嶷と崔琳は一歩間違えれば命がない、こんな過酷な権力争いの中にいます。二人は好敵手として認め合い愛し合いますが周囲の欲望や裏切りによって、その愛は常に試され続けるのです。
「楽游原」の由来
タイトルの「楽游原」は実在した場所です。前漢の時代に造営された「楽遊苑」に由来し、晩唐の詩人・李商隠の漢詩などにも登場する地名です。劇中では平和な楽園のような場所として描かれています。
楽游原 感想と見どころ
李嶷:シュー・カイの魅力がレベルアップ?
シュー・カイのかっこよさはもちろんですが。今回はシビアなドラマだけあって、苦しむ場面も多いです。今までは正直、こういう悲しさを表現するのはあまり得意ではないのかな?と思ってましたが。意外とちゃんと演技できてる(失礼)。
シュー・カイ自身がインタビューで「7日連続で泣く演技をして心が折れた」というくらいですから、かなり頑張ってんでしょうね。その甲斐はあったと思います。
ここのところシュー・カイの演義もワンパターンになりがちだったので、これで一段レベルアップしたかんじです。
戦場での強さと、ヒロイン崔琳の前で見せるギャップも魅力でしょうか。お姉さんに甘える大きな男の子って感じですね。シュー・カイファンにとっては注目のドラマになると思います。
崔琳:『麗王別姫』を思い出しながら
『楽游原』の崔琳を見ていると、どうしても『麗王別姫』が頭をよぎるんですよね。いませんか?そういう方。
それは単に主演女優が同じというだけでないと思います。
『麗王別姫』は唐朝の安史の乱が舞台でした。『楽游原』は架空王朝ですが朝廷を揺るがす謀反と各地の軍閥(鎮西都護軍や崔家軍)の争いが描かれています。状況は同じです。違うのはジン・ティエン演じるヒロインに武力があることです。
ジン・ティエンはこの似通った乱世の背景で、違うタイプのヒロインを見事に演じ分けているからすごい!
- 沈珍珠:かなり動き回ってはいましたが。力を持ってるキャラではなく、耐える部分が多かったように思います。古典的なヒロインでした。
- 崔琳:男装し戦場と政治の最前線で刀と頭脳を振るい、時代を動かす側に立つ。現代的なヒロイン像。
『麗王別姫』で感じた「もし沈珍珠に力があったら?」という妄想を崔琳が実現しているような感じがします。
もちろん演じてるジン・ティエン本人の成長があるから崔琳が魅力的に見えるので、沈珍珠には沈珍珠の良さがあるのですけどね。
柳承鋒: 拗らせすぎ!自己中すぎる「嫉妬の男」
柳承鋒は中国ドラマによくいる粘着質なストーカー枠のキャラでした。
軍師としてはそこそこ優秀ですが、彼の行動の全てはヒロイン・崔琳への歪んだ執着と嫉妬心からきています。
彼は崔琳が幸せになるより「自分が彼女の隣にいること」だけを優先しました。李嶷への激しい嫉妬心から国を混乱させるとは自己中もここまでくればたいしたもの。
でも闇落ちしても全然魅力がない大物悪役にもなれない。ただの「私的な恨み」で国を引っ掻き回す、スケールの小さい「邪魔者」だったのは残念。その分、消えたときの爽快感はありましたけどね。
梁王(李嶷の父)【無能】という名の悪役!
李嶷の父 梁王は悪意に満ちた謀反人ではありませんが、その優柔不断と無知でイライラさせてくれました。彼こそが李嶷の人生を狂わせた元凶です。
最も有能な孝行な息子を嫌悪・警戒し、代わりに無能な兄たちを偏愛するという親として最低の判断力。その上、皇帝に祭り上げられてからは讒言に耳を傾けて愚策を連発!
古来、敵より厄介なのは無能でやる気のある味方ですが。力のある無能も厄介です。彼こそが李嶷と崔琳の愛と努力を打ち砕く最大の壁だといえます。でも最後は和解できてよかったです。
遅すぎるよ。
顧婉娘:愛情が暴走した「幼稚な妨害者」
顧婉娘は李嶷に助けられた恩から恋に落ちたものの、その気持ちがとんでもない執着に変わってしまったキャラクターです。
李嶷と崔琳の仲を認められない強すぎる嫉妬とプライド。そこから生まれる行動は、もう手がつけられません。自分の立場を悪用して二人の間に割り込み、悪質なイジワルを次々と仕掛けます。
努力して愛を勝ち取るのではなく、嫉妬心で主役二人の足を引っ張り続けるのは、観ていてイライラさせられましたよね。幼稚なキャラでした。
『楽游原』がおすすめなワケ
匪我思存 作品ってどんな感じ?
『楽游原』は悲劇の女王とよばれる「匪我思存(フェイウォースーツン)」の小説が原作。彼女は激しすぎる愛憎劇から「悲劇の女王」と呼ばれています。
匪我思存作品の魅力は登場人物が権力争いや裏切りにどんどん巻き込まれてしまうところ。幸せの絶頂から一気にどん底へ突き落とされる、そんな激しい感情の動きと、とにかく容赦ない悲しい結末が特徴です。
愛はいつも「権力」という嵐に飲み込まれ、多くの犠牲や痛みが生まれてしまうのです。『東宮』がそのパターンでした。
『楽游原』はこんな人におすすめ
『楽游原』はそんな「悲劇の女王」の作品ですが。他の作品ほど悲劇ではありません。最後に「ホッとする結末」が待っているから悲劇が苦手な人にもおすすめです。
結末は安心感
代表作の『東宮』と違って、この物語の李嶷と崔琳は困難な目に遭いますが最後にはちゃんと結ばれます。悲しい話が苦手な人でも安心して見届けられるのが嬉しいところ。
過程はしっかり「匪我思存」
結末がハッピーエンドに近くても、そこに至るまでの道は甘くありません。一族の裏切りや策略の数々。二人の愛が試されるいかにも匪我思存らしいヒリヒリする痛みはしっかり健在です。なので途中で脱落しないように見るのがしんどいと感じる人もいるかも。
対等な二人が素敵
お互いの力を認め合い、競い合うライバル関係から恋が生まれる。現代的で強い魅力を持ったカップル像もこの作品の大きなポイントです。
深い愛憎劇が好き。でも最後は報われる愛の物語が見たい。そう思う人に『楽遊原』はピッタリです。
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