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天幕のジャードゥーガルは実話?史実と実在人物・モデルを紹介

『天幕のジャードゥーガル』は、13世紀のモンゴル帝国に捕虜として連れて行かれた女性ファーティマ・ハトゥンをもとにした物語です。

主人公シタラの幼少期やトゥースでの暮らしは作品独自の設定ですが、ドレゲネ・ハトゥンに仕えた女性がいたことは史実に残っています。

この記事では物語のおおまかなあらすじとモデルになった人物たち、ジャードゥーガルの意味を紹介します。

この記事で分かること

  • 『天幕のジャードゥーガル』はどこまで史実に近い?
  • シタラのモデルになったファーティマ・ハトゥンとは
  • ドレゲネ、オゴタイ、トルイなど実在人物
  • 「ジャードゥーガル」という題名に込められた意味

 

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天幕のジャードゥーガルとは

『天幕のジャードゥーガル』は13世紀のモンゴル帝国を舞台にした漫画作品です。2026年7月にはアニメが放送されました。

主人公のシタラは、ホラーサーン地方のトゥースという町で育ち、モンゴル軍の侵攻によって捕虜となります。その後、彼女は亡き主の名であるファーティマを名乗り、やがてオゴタイの后ドレゲネ・ハトゥンに仕える人物になっていきます。

この作品には、実在人物をもとにした人物が多く登場します。ドレゲネ・ハトゥン、オゴタイ、トルイ、グユク、チンギス・カンは史実に名前が残る人物です。ファーティマ・ハトゥンも、モンゴル軍がホラーサーン地方へ侵攻したときに捕虜となり、その後ドレゲネの側近になった女性として伝わっています。

シタラの幼少期や、彼女がトゥースでどのように暮らしていたのかという点は、作品独自の設定です。この記事では、アニメを見た人向けに、『天幕のジャードゥーガル』の人物がどこまで史実に関係しているのかを順番に見ていきましょう。

 

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天幕のジャードゥーガルは実話?

史実のファーティマ・ハトゥンをもとにした物語

『天幕のジャードゥーガル』は13世紀のモンゴル帝国と実在人物をもとにしています。主人公のシタラは実在したファーティマ・ハトゥンがモデル。

1220-23年にチンギス・ハンはトルイの軍をホラーサーン地方に派遣。ファーティマはホラーサーン地方のマシュハド方面(現在のイラン)にいましたが、攻め込んできたモンゴル軍によって捕虜になったとされています。その後、彼女はオゴタイの后ドレゲネ・ハトゥンに仕えました。

モンゴル帝国2代カアン(皇帝)オゴタイの死後、ドレゲネは宮廷で大きな力を持ちました。そのドレゲネの側近として宮廷で影響力をもっていたのがファーティマでした。

劇中ではシタラはモンゴルの捕虜になった後にもとの主だったファーティマの名を名乗ります。宮廷の権力争いに巻き込まれ、史実同様にドレゲネに仕えるようになるのです。

シタラの名前や幼少期の出来事は架空ですが。ホラーサーン地方のマシュハド方面でモンゴルの捕虜になったこと。その後、ドレゲネに仕えたことは事実です。

でも史料に残っているのは結果と周囲の目から見た評価のみ。ファーティマ自身の言葉や彼女が何を考えていたのかまではわかりません。

「天幕のジャードゥーガル」は資料にないファーティマの幼少時代や、モンゴル帝国に着てから彼女が何を考えてどう行動したのかを想像で補った物語と言えます。

 

史実との違い:シタラの生い立ちは作品独自の設定

史実のファーティマ・ハトゥンが子どものころにどのような家で育ったのか、誰に仕えていたのか、どのように学問に触れたのかは当時の記録には残っていません。

劇中ではシタラはもともと奴隷でしたが母が亡くなったために売られてしまい。ファーティマという女性の家に仕える事になりました。

そのファーティマは教育熱心で奴隷のシタラを娘のように扱い教育も受けさせました。彼女の息子ムハンマドも知的探究心の強い少年でした。

ところがトルイ指揮するモンゴル軍の襲撃でファーティマや親しい人達が命を落としてしまいます。家の財産だった貴重な書物「原論」もトルイに奪われてしまいます。

その後、奴隷としてモンゴル側へ連れて行かれたシタラは亡き主の名を受け継ぎ、「ファーティマ」と名乗り王族に近づき「原論」を取り戻そうとするのでした。


ユリイカ 2026年7月号 特集=『天幕のジャードゥーガル』の世界 ―トマトスープが描く歴史マンガの新地平―

ファーティマの新しい仲間ドレゲネ

劇中ではファーティマはオゴダイの正妃ソルコクタニ・ベキに仕えていましたが。あまりにも被害に無神経なソルコクタニ・ベキをファーティマは反感を持ちます。

そんなときオゴダイの第六妃ドレゲネと出会いました。ドレゲネは彼女はメルキト出身で夫を殺されオゴダイの妃にされていました。ファーティマとオゴダイはモンゴルに復讐するために協力することになるのでした。

史実ではファーティマがドレゲネに仕えたのは事実ですが、その経緯はよく分かっていません。二人が協力してモンゴル帝国に復讐を企んだかどうかもわかりません。

ドレゲネは自分の息子を次のカアンにするため他の妃や臣下と争いました。結果、ドレゲネが監国として国を統治、カアンのいない時代が5年間続きました。

ドレゲネは息子のグユクを即位させますが、王族たちの不満は残りました。その結果、モンゴル帝国の衰退を早めたとも言われます。

 

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天幕のジャードゥーガルの実在人物とモデル

シタラ

後にファーティマ・ハトゥンを名乗る主人公

声:関根明良

主人公。イラン東部のトゥースで暮らす奴隷。母を亡くし学者の一家に拾われました。

モンゴル帝国の襲来によって、彼女が仕えていたファーティマは命を落とし、シタラは捕虜としてモンゴル側へ連れて行かれます。

トルイの正妃 ソルコクタニ・ベキに仕えました。名前もファーティマとなります。その後ドレゲネ・ハトゥンと出会い、モンゴルへの復讐を企みます。

 

史実のファーティマ

史実のファーティマはオゴタイの六妃ドレゲネに仕えました。2代皇帝 オゴタイの死後にドレゲネが監国として政治の主導権を握り、ファーティマの側近として強い影響力を持ったとされています。

しかし3代皇帝 グユク即位後に処刑されました。このときの罪状が「政敵たちを呪ったから」彼女は「魔女」として処刑されたのでした。実際には呪いは口実で、ドレゲネ派臣下に対する粛清だったと言われます。

詳しくはこちらをご覧ください
シタラのモデル? ファーティマ・ハトゥンはどんな人?

 

ムハンマド

知識を求めて旅立ち高名な学者になる

声:齋藤潤

ムハンマドはファーティマの息子。聡明な少年で幼いシタラに学ぶことの重要性を説きました。モンゴルの侵攻後は、知恵と真理を探すために旅に出ます。

ムハンマドは以後は登場しませんが。おそらく実在した学者ナスィールッディーン・トゥースィーをもとにした人物だと考えられます。

史実?のムハンマド

ナスィールッディーン・トゥースィーは、1201年にトゥースで生まれた学者です。のちに数学、天文学、哲学で実績を残しモンゴル帝国の中東方面を支配するイルハン朝のフレグにも仕えました。ナスィールッディーン・トゥースィーの本名はムハンマド。

 

トルイ

チンギス・カンの四男

声:鈴木崚汰

チンギス・カンの四男で末子。将軍として軍を率い中東方面を征服。父から多くの財産と兵を受け継ぎ、モンゴル帝国でも大きな軍事力を持っていました。

知識は興味はありませんが正妃が「原論」を欲しがったので、ファーティマの家から奪いました。

チンギス・ハンの死後、次の皇帝が決まるまでは監国として国をまとめました。次の皇帝には兄(三男)オゴタイが即位しましたが、オゴダイとは仲がよいです。

史実のトルイ

史実でもトルイはチンギス・カンの子どもたちの中で重要な立場にいました。彼の子孫にはモンケ(4代皇帝)、フビライ(5代皇帝・元朝初代)、フレグ(イルハン朝初代)、アリクブケ(5代対立皇帝)などモンゴル帝国の有力者がいます。

モンゴル帝国の後を考えるうえでもトルイ家は重要な一族です。

トルイとは?チンギス・カンの四男の生涯と最後

 

ドレゲネ

オゴタイの六妃

声:小清水亜美

ドレゲネは、オゴタイの第六妃。劇中では心の内にモンゴルへの深い恨みを秘め、夫であるオゴタイを敵視している人物として描かれます。

シタラと出逢って一緒にモンゴル帝国に復讐する決意を固めます。

 

史実のドレゲネ・ハトゥン

第2代皇帝オゴタイの第六妃。第3代皇帝グユクの生母。
メルキトのナイマン族出身で結婚もしていましたが、モンゴル帝国の侵攻で夫を失い、オゴタイの妃になりました。

オゴタイが亡くなった後、次の皇帝が決まるまでの間は監国として政治を担いました。彼女は自分の息子グユクを大ハーンにするために暗躍。ファーティマ・ハトゥンを側近として頼りにしました。

実子グユクを次の皇帝にすることに成功しましたが、グユクによってファーティマを含む側近たちが粛清され、自身も2ヶ月後に死亡しました。

 

オゴタイ

チンギス・カンの三男

声:下野紘

チンギス・カンの三男。ドレゲネの夫。チンギス・ハンの死後に父の遺言で2代皇帝になりました。

思慮深く穏やかな人物。帝国の発展のため、新しい考えを取り入れますがなかなか周囲から理解されません。

 

史実のオゴタイ

モンゴル帝国第2代皇帝(カアン)。チンギス・カンの死後、古い称号「カアン」を復活させ。父の方針を受け継ぎ帝国の拡大を進めました。トルイとともに金朝を滅亡させ。カラコルム宮殿を建設しています。

 

ジュチ

チンギス・カンの第一皇子

声:野島健児

チンギス・カンの第一皇子です。劇中では控えめで大人しい性格の人物として描かれます。

史実のジュチ

チンギス・カンの長男。すぐ下の弟ジョチとは不仲。強硬な作戦をとりたがるチャガタイに対して、時間をかけてでも犠牲を少なくする戦い方を好んだとされます。

中央アジアの草原地帯からウクライナまでの大きな領地を与えられ、彼の子孫が後にキプチャクハン国(ジョチウルス)を建国。モンゴル帝国の西方部分を構成しました。

 

チャガタイ

チンギス・カンの第二皇子

声:浪川大輔

チンギス・カンの第二皇子。法や規律を重んじる厳格な人物として描かれます。ただし、その厳しさは奴隷や民を守るためという彼なりの理由があります。

史実のチャガタイ

激しい性格のため後継者候補からは外されていたといいます。しかし法を守ることには厳しく、父からは法律の管理人を任されました。

兄ジョチとは仲が悪かったのですが、弟オゴタイとは仲が良かったようです。父チンギス・ハンのもとで軍を指揮して金や西方への遠征を行いました。中央アジアのカラキタイ(西遼)滅亡後はその領地を与えられています。彼の子孫がチャガタイハン国(チャガタイウルス)を建国。モンゴル帝国の中央アジア部分を構成する国となっています。

 

ソルコクタニ・ベキ

トルイの正妃、クビライの母

シタラ(ファーティマ)がモンゴル帝国で最初に仕える主。ケレイト族出身。ネストリウス派キリスト教の信者。

知識を得ることに熱心で西方の知識をモンゴルに取り入れたいと考えています。でもそのための犠牲がでることには無頓着。シタラを側近にしますが、シタラからは恨まれていることには気づいていません。

史実のソルコクタニ・ベキ

ケレイト族の王族。姉はチンギス・ハンの妃になっており、モンゴル皇室とも縁が深い。夫のトルイとは仲がよく、モンケ、クビライ、フレグ、アリクブケの四男を出産。トルイ無き後もトルイ家をもり立て、息子たちを皇帝にしました。

グユクを皇帝にしたドレゲネには不満を持ち対立。

 

架空の人物

ファーティマ

シタラが仕え教育を与えた女性

劇中のファーティマは、シタラが仕えた女性です。ファーティマはシタラに学ぶことの大切さを伝え、彼女の生き方に大きな影響を与えます。

このファーティマは、モンゴル軍の攻撃で命を落とします。シタラはその後、彼女の名を受け継ぎますが、ここは作品独自の設定です。

史実で知られるファーティマ・ハトゥンとは、ドレゲネ・ハトゥンの側近となった女性のことです。劇中では、シタラがその人物になっていく形で描かれています。

 

天幕のジャードゥーガルの時代背景

舞台は13世紀のホラーサーンとモンゴル帝国

作品の序盤は、ホラーサーン地方のトゥースから始まります。ホラーサーンは現在のイラン北東部、アフガニスタン、中央アジア方面にまたがる地域です。

13世紀、この地域はモンゴル軍の侵攻を受けました。都市は攻撃され、多くの人が命を落とし、生き残った人々の中には捕虜として連れて行かれた者もいました。

シタラが捕虜になる展開は、こうした時代背景をもとにしています。物語の入口は一人の少女の人生ですが、その背後には、ユーラシア規模で広がったモンゴル帝国の征服活動があります。

 

モンゴル帝国では后妃も政治に関わった

『天幕のジャードゥーガル』を見るうえで知っておきたいのが、ドレゲネ・ハトゥンの立場です。

モンゴル帝国では皇帝が亡くなった後、次の皇帝が決まるまで、后妃や有力な一族の女性(とその一族)が政治を担うことがありました。ドレゲネはその代表的な人物です。

彼女はオゴタイの死後、監国として国の政治を動かせる地位にいました。ドレゲネはファーティマ・ハトゥンを信頼して彼女に大きな役割を与えました。様々ん人事や政策を行っていきます。

 

ジャードゥーガルとはどういう意味?

ファーティマが魔女と呼ばれた理由

「ジャードゥーガル」は、ペルシア語で魔術師・呪術師に近い意味を持つ言葉です。

史実のファーティマ・ハトゥンはドレゲネの側近として強い影響力を持ちました。3代皇帝グユクの即位後。彼女は政治的に追い詰められます。グユクの側近たちは、ファーティマが呪術を使ったと疑い、彼女を捕らえました。

ファーティマが本当に呪術を使ったのかはわかりません。当時の記録に残るのは、彼女が疑われ、拷問を受け、処刑されたということだけです。

魔女という呼び名は政治的な攻撃でもあった

権力の近くにいた女性が、政治の争いの中で「呪術を使った」と言いがかりをつけられて攻撃されることは、世界の歴史でもよくあることです。

ファーティマもドレゲネの側近として大きな力を持ったために、敵を作ることになった考えられます。病気や不幸な出来事の責任を負わされ最後には処刑されました。

『天幕のジャードゥーガル』の題名はこのファーティマの最期から連想された言葉でしょう。「魔女」は政治的に危険視された女性への呼び名として考えると、ファーティマがどのような立場にいたのか分かりやすいかも知れません。

 

よくある疑問

天幕のジャードゥーガルは実話ですか?

実在の人物と実際の歴史をもとにした作品です。ただし、シタラが過ごした幼少期や人物同士の会話などは作品独自の設定となっています。史実ではファーティマ・ハトゥンがホラーサーン地方でモンゴル軍に捕らえられ後にドレゲネ・ハトゥンに仕えたことが伝わっています。

 

シタラは実在しましたか?

シタラという名前は当時の史料には残っていません。シタラは亡き主ファーティマの名を受け継ぎ、後にドレゲネに仕えるファーティマ・ハトゥンになる設定です。史実におけるファーティマの幼少期は不明となっています。

 

ファーティマ・ハトゥンは実在しましたか?

ファーティマ・ハトゥンは実在した人物です。モンゴル軍がホラーサーン地方へ侵攻したときに捕虜となり、その後ドレゲネ・ハトゥンの側近になりました。

 

ドレゲネ・ハトゥンは実在しましたか?

ドレゲネ・ハトゥンは実在の人物です。オゴタイの后でオゴタイが亡くなった後、次の皇帝が決まるまで政治を担いました。彼女の時代にファーティマ・ハトゥンが大きな力を持ちました。

 

ムハンマドは実在人物ですか?

劇中に登場するムハンマドは、後の学者ナスィールッディーン・トゥースィーがモデルと考えられます。ただし、劇中ではシタラと別れた後は再登場しないため。後に学者となったことが語られるのみです。

 

 

 

モンゴル帝国・元
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この記事を書いた人

歴史ブロガー・フミヤ

著者 自画像

京都在住。2017年から歴史ブログを運営し、これまでに1500本以上の記事を執筆。50本以上の中国歴史ドラマを視聴し、史実とドラマの違いを正史(『二十四史』『資治通鑑』など)に基づき初心者にもわかりやすく解説しています。

詳しい経歴や執筆方針は プロフィールをご覧ください。

運営者SNS: X(旧Twitter)

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