馬皇后（孝慈高皇后）洪武帝を支えた庶民出身の皇后

孝慈高皇后 馬氏は明の初代皇帝 洪武帝 朱元璋の正妻。

馬皇后ともいいます。

馬皇后は朱元璋が紅巾軍にいた時代に結婚した女性。彼女の両親の素性はよくわかっていません。

元末期の戦乱の世の中で朱元璋は軍を率いて、中華を統一。馬皇后は戦いに明け暮れる朱元璋を支えました。

明の建国後は皇后になりました。思いやりがあり贅沢を嫌う人でした。

史実の馬皇后（孝慈高皇后）はどんな人物だったのか紹介します。

孝慈高皇后 馬氏の史実

馬皇后の肖像画

どんな人？

日本では室町時代になります。

馬皇后の家族

馬皇后の生涯をわかりやすく解説

不明な出自と紅巾軍との出会い

馬皇后は1332年に現在の安徽省宿州市付近で生まれました。

両親については詳しくわかっていません。父親の馬公は何かしらの事件に巻き込まれ、娘の馬氏を郭子興という人物に託したと伝えられています。

養父の郭子興とは

郭子興は定遠の裕福な土豪で白蓮教の信徒でした。白蓮教団が中心になった紅巾の乱が起こると、郭子興は地元の白蓮教信徒や荒くれ者を率いて武装蜂起。濠州を攻略して自ら「元帥」と名乗りました。

彼は貧しい人々や不満を抱く人々をまとめ上げ元朝政府に反旗を翻していました。

馬氏はそんな郭子興の養女となり紅巾軍の内部で成長。やがて朱元璋という若者と出会います。

朱元璋と馬氏の結婚と二人の関係

朱元璋はもともと小作農の出身で寺で暮らしていた時期もありました。その後、紅巾軍の一員となり、その中で頭角を現します。

郭子興との出会い

郭子興は朱元璋が活躍する様子を見て気に入り、養女の馬氏を嫁がせることにしました。これは朱元璋の能力を高く評価、彼を自分の側の人間にしたかったためと考えられます。

馬氏との結婚生活

馬氏と朱元璋は結婚後も良好な関係を築きました。朱元璋は戦場で馬氏を伴い彼女は軍務をサポートするなど、夫婦二人三脚で活躍しました。

馬氏は朱元璋に対して民衆への思いやりを促しむやみに人を殺すことを諌めるなど、常に彼を支えていました。

養子たちとの絆

馬氏と朱元璋は朱元璋の親族や孤児などを養子として迎え入れ大きな家族を築きました。馬氏は養子たちを我が子同然に愛して育てました。

馬皇后、夫のピンチを支える

朱元璋を妬む人たちが陥れる

やがて朱元璋が軍内で出世するにつれ、嫉妬や妬みから陥れられ何度も窮地に立たされます。

郭子興は猜疑心が強い割に人に乗せられやすいので、何度も朱元璋を疑ったり叱ったりしていました。

飢えに苦しむ夫に食料を盗み与える

ある時、朱元璋は濡れ衣を着せられ食事を与えられずに閉じ込められてしまいました。

馬氏はそんな夫を心配して厨房に忍び込み、熱々のパンを胸に抱えて密かに差し入れました。その結果、胸に火傷を負ってしまいましたが、夫を助けたい一心だったのでしょう。

財産を投げ出し、夫の窮地を救う

馬氏は自分の財産を養母の張夫人や郭子興の妾の張氏に贈り、彼女たちに義父にとりなしてほしいと頼み朱元璋を助けようとしました。

夫の命を守るために彼女はあらゆる手段を尽くしたのです。

戦乱の世を生き抜き、夫を支える

朱元璋が天下統一に向けて戦いを繰り広げる中、馬氏は後方で兵士たちを励まし家族を支えました。厳しい戦況下でも彼女は冷静さを失わず自らの手で服や靴を縫い、兵士たちの士気を高めました。

危機一髪の状況下でも兵たちを励ます

元至正20年（1360年）。天完国の皇帝を自称する陳友諒の軍が朱元璋の江寧（江蘇省南京市郊外）を攻撃しました

この戦いでは敵が城下に迫り城内が混乱状態になりました。でも馬氏は冷静さを保ち自らの財産を配って兵士たちを励まし軍の士気を維持しました。彼女の勇気と冷静な判断は朱元璋の勝利に大きく貢献しました。

明の建国後

晩年の馬皇后

明王朝の創設と皇后への即位

1368年。朱元璋は応天府（南京）を占領。明王朝を建国しました。自身は皇帝になり、愛妻の馬氏を皇后にしました。そして長男の朱標を皇太子に指名、新しい王朝への第一歩を踏み出しました。

子育てと義理の子供たちへの愛情

馬皇后は5人の息子と2人の娘を厳しく育てました。一方で夫・朱元璋の義理の子供たちである沐英や李文忠などには、まるで実の子供のように愛情を注ぎました。

実家の栄誉と質素な暮らし

馬皇后は皇后となった後も実家の両親を敬い、徐王と徐王妃に追封。立派な祠を建てて祀りました。しかし自身は華やかな生活を送ることなく、質素な暮らしを貫きました。自ら布を織り、その布で衣服を作り困窮している人々に分け与えるなど、慈悲深い一面も見せています。

賢明な助言で夫を支える

猜疑心が強く厳しい性格の朱元璋は即位後に大規模な粛清を行いました。馬皇后はそんな夫の傍に寄り添い、時にはその行為を諌めることもありました。彼女の賢明な助言によって、多くの人の命が救われたと言われています。

人材育成と災害対策への取り組み

馬皇后は、人材育成にも力を入れていました。科挙制度の改善を提言し、学生たちが安心して学べる環境づくりに貢献しました。また、災害に備えて食料を備蓄するよう夫に助言するなど、国を思う深い愛情を示しました。

馬皇后の最期

病に倒れる

1382年。馬皇后は病に倒れました。懸命な治療が行われましたが、容態は悪化の一途を辿ります。意識が朦朧とする中、朱元璋は馬皇后に「何か言い残すことはあるか」と問いかけました。

馬皇后は衰弱した体で夫である朱元璋に次のように言いました。

これが馬皇后の最後の願いとなりました。

朱元璋の悲しみと決意

最愛の妻を失い朱元璋は深い悲しみに打ちひしがれました。

馬皇后の死後、朱元璋は二度と皇后を立てませんでした。馬皇后への変わらぬ愛と尊敬の念、そして彼女を失った悲しみを生涯抱き続けた証と言えるでしょう。

明王朝を揺るがせた皇子の出生をめぐる謎

明朝を築いた朱元璋と皇后・馬氏の間に生まれたとされる子供たち。その出生をめぐって実は様々な説が存在します。

公式見解と史料の矛盾

明史では馬皇后の子として5人の皇子と2人の公主が記されています。しかし皇室の儀礼を司る太常寺志には、各皇子の生母が異なる側室と記されています。この食い違いは、一体何を意味するのでしょうか？

馬皇后の不妊説と養子説

長らく馬皇后は子供を産めなかったという説が有力視されてきました。

そのため、側室の子を馬皇后が育て自らの子供として世に送り出したと考えられています。特に明の建国前、朱元璋が反乱軍を率いていた頃には戦場で側室を伴うことが一般的でした。そのため、馬皇后は朱元璋が戦地で得た子供たちの養育に当たっていた可能性も考えられます。

永楽帝の主張と明朝の公式見解

永楽帝・朱棣自身は自分が嫡子であると強く主張していました。明朝としても5人の皇子は全て馬皇后の子という公式見解を貫き通しました。この背景には、皇位継承の正当性を確立し王朝を安定させるという目的があったと考えられます。

さまざまな解釈と謎

この皇子の出生をめぐる問題は歴史学者の間でも議論が尽きないテーマです。

• 政治的な理由: 皇位継承の安定のため、公式には馬皇后の子とされた。
• 記録の誤り: 太常寺志の記録が誤っている可能性も否定できない。
• 養子と実子の混同: 馬皇后が養育した子供の中に、実子も含まれていた可能性がある。

まとめ：謎に包まれた皇子の出生

明王朝の皇子たちの出生をめぐる問題は歴史の謎として、人々の興味を引き続けています。様々な説が飛び交う中、真実は闇の中です。

テレビドラマ

真命天子　2016年、中国　演：鄔靖靖
乞丐皇帝與大腳皇后傳奇　2016年、中国　演：寧静
永楽帝　2018年、中国　演：王姫