中国ドラマ『度華年(どかねん)』には、長公主・李蓉のそばに静かに寄り添う人物がいます。
それが裴文宣(ペイ・ウェンシュエン)です。
身分の高くない家に生まれましたが、若くして科挙に状元(首席)で合格。その後の努力によって大夏の首輔(宰相)にまで昇りつめました。政治の世界では冷静で先を読む力に優れ、宮廷の人々から一目置かれる存在です。
けれど李蓉の前に立つと、前世から抱えてきた迷いと後悔がふとこぼれます。
前世と今世、二つの人生を通して、彼がどんな選択を積み重ねていくのか。そこに『度華年』の魅力があります。
この記事で分かること
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裴文宣がどんな人物で、どんな道を歩んできたのか
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前世と今世で、彼がどのように「選択」を変えているのか
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李蓉との関係がどう深まり、どんな転機があったのか
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『度華年』の政治パートを理解するための基本構造と見どころ
裴文宣の基本プロフィール
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役名:裴文宣(ペイ・ウェンシュエン)
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演:張凌赫(ジャン・リンホー)
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出自:寒門出身(身分の高くない家柄)
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学歴:科挙で状元(首席合格)
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官職:大夏朝の首輔(宰相のトップ)
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家族関係
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妻:長公主・李蓉
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岳父:皇帝・李明
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義弟:皇太子・李川
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叔父:裴礼賢 など
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前世の裴文宣: 長公主の夫から政敵へ
『度華年』は前世と今世の二つの時間軸があります。今世のドラマの中でも前世の出来事が明らかにされていきます。まずは前の人生から見ていきます。
前世の裴文宣は寒門出身で科挙出身のエリートとして大夏の政治の中心に立ちました。皇帝・李明はその才能を高く評価して皇女の李蓉との婚姻を命じます。
最初は立場の違いに戸惑っていましたが少しずつ夫婦として歩み寄っていった二人。しかし次のような問題が間に割り込んでいきました。
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皇帝の疑念
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名門・蘇家や上官家との権力争い
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寒門出身者に向けられる偏見
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皇族と宰相という微妙な力関係
国を守るために冷静な判断を優先する裴文宣と、公主としての責任と気持ちのあいだで揺れる李蓉。互いを思いながらも、政治では敵同士のようになっていきます。
今世の裴文宣:記憶を抱えたままやり直す人生
ところが物語はそこで終わりません。
あるきっかけで、裴文宣も李蓉も前世の記憶を持ったまま若い頃に戻ることになります。
今世の裴文宣は、まだ首輔ではありません。
御史台などの役所で働く若い官僚で、これからどう進むのかが決まっていない時期です。
前の人生では、
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権力の中心へ進む
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皇帝に信頼される
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その代わり、大切な人を傷つけてしまう
という道を選びました。
今度の人生では同じ選択を繰り返すのか別の道を歩くのか。裴文宣はその答えを探し始めます。
ドラマでは李蓉とのあいだに
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政治上のパートナーとして協力する場面
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前世の誤解を少しずつ解いていく過程
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離れようとしながらも支え合う揺れ
が丁寧に描かれています。
前の人生との違いを見ながら物語を追うと、裴文宣が何を考えているのがわかりやすくなると思います。
李蓉との関係:仇同士から相棒、恋人へ
ドラマの中で裴文宣と李蓉の関係は
と変化していきます。
二人は前世では政治に巻き込まれた結果、ほとんど仇のようになってしまいました。今世ではすぐに甘い関係になるわけではありませんが、歩み寄り方が少しずつ変わっていきます。
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政治上の相棒として同じ敵に立ち向かう
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情報を共有して目的を理解し合う
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ときには口論しながらも、前とは違う選択をしていく
印象的なのは「先に権力を得てから和離(離縁)しよう」という取り決めです。一見冷たく見えますが、前世で流されるまま破滅してしまった経験があるからこそ、
今度こそ、自分たちの意志で選びたい
という思いが込められています。
物語が進むほど、二人は“互いを追い詰める相手”から“王朝の未来を共に考える相棒”へと変わり、そこから恋心が戻ってくる姿が描かれていきます。
大夏の政治を動かす役割:寒門出身の首輔として
裴文宣は恋愛の相手役というだけでなく、政治ドラマの中心にいます。
彼の立場をまとめると次の通りです。
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生まれは寒門の家
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科挙の状元として才能を認められる
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宰相のトップ「首輔」に就任
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皇帝から信頼される一方、名門や後宮からは警戒される
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皇族(李蓉・李川)と庶民出身官僚の橋渡し役でもある
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どの勢力と手を組むか
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どこまで譲るか
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どこで線を引くか
後半では李蓉や李川と協力し、蘇容卿たちの陰謀を追い詰め、大夏の政治を立て直す方向へ進んでいきます。
結果的に李川の即位を助け、その後、李蓉が“自分の生き方”を選べる道を整えていく立場に立ちます。
ドラマの勢力図は以下の通り。この中で裴文宣は緑で塗った寒門に所属。

度華年 勢力図
この図でも示したように裴文宣は皇族(李川や李蓉)と協力し、世家に対抗する立場を取ります。
歴史上の「寒門宰相」とのイメージの重なり
『度華年』の舞台になる大夏は架空ですが、時代背景は魏晋南北朝に唐をプラスしたイメージで作られています。
特に貴族の力が弱まり、科挙出身官僚が活躍した唐の後半以降が思い浮かびます。
たとえば次のような人物です。
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唐代・馬周
貧しい出身から才覚ひとつで宰相になった人物です。 -
北宋・范仲淹
幼少期の苦労を乗り越え、科挙に合格。政治改革を進めた官僚として知られます。 -
北宋・欧陽修
幼くして父を亡くしましたが、文人としても政治家としても活躍した人物です。
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名門出身ではない
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科挙と実務で評価された
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皇帝や貴族の間で悩みながらも国のために働いた
裴文宣をこうした「寒門宰相」のひとりとして眺めてみると、彼の決断や迷いがより理解しやすく感じられます。
裴文宣の最後(結末ネタバレ)
※ここからは最終回までのネタバレを含みます。
物語の終盤、裴文宣は最後まで太子・李川と李蓉の側に立つことを選びます。
一族の安全のために蘇家へ寄ろうとする叔父たちに対し、
「太子は妻の弟だ。何があっても離れない」
とはっきり告げ、かつて父を害した酒を逆手に取って家主の令牌を取り返します。
この時点で裴文宣は、自分の家よりも「守るべき人たち」を選ぶ決意を固めています。
宮中のクーデターが起こると、裴文宣は令牌から李蓉の危機を察し、軍を率いて皇城へ向かいます。朝堂では蘇容卿が太子に謀反の罪を着せようとしますが、
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蘇家の父はすでに利用されていること
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推挙制を廃し、科挙で官僚を登用すべきこと
を大臣たちに訴えて局面を変えようとします。
また家族を保護し簪を見せることで降伏を促すなど、流血を最小限に抑えようと動きます。
李蓉を守るため、一度は部屋に閉じ込めて自らが門前で戦い続ける場面もあります。
やがて戦況は王家側に傾き、柔妃は皇帝を刺して命を奪います。蘇容卿は玉璽を奪おうと逃げ回り、裴文宣との一騎打ちに。互いに傷を負いながら、裴文宣は
「道がなかったのではなく、自分で選択肢を捨ててきただけだ」
と告げ、蘇容卿が“家のため”を理由に暴走してきたことを指摘します。
李蓉が駆けつけたとき、蘇容卿は自ら剣を受ける形で倒れ、最後に思いを語って火の中へ消えていきました。裴文宣は李蓉を抱えて火の海から連れ出し、彼女の安全を最優先します。
皇帝の死後、李川が皇位につきますが北伐のため宮中を離れ、政務を李蓉に託します。
李蓉は監国長公主として政治を担い、そのそばに裴文宣が丞相として立ち続けます。
三年後、徳旭元年。
長公主・李蓉と丞相・裴文宣は改めて夫婦となりました。
政略婚から始まり、一度は壊れてしまった二人が今度は自分たちの意志で選んだ夫婦として結ばれる結末です。
裴文宣の物語は、出世物語でも悲恋物語でもなく、
「守る相手と生き方を、自分で選び直した政治家の物語」
として描かれています。
裴文宣を見るときの視聴ポイント
最後に、裴文宣に注目するときのポイントをまとめておきます。
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前世と今世で、似た状況をどう選び直しているか
同じような場面でも、前とは違う選び方をしているところを見ると、彼の変化がわかりやすいです。 -
李蓉との距離感の変化
表面上は冷たく見えるときもありますが、言葉にならない感情がにじむ場面が多いです。 -
「出世」と「守りたい人」のどちらを選ぶか
皇帝や名門のあいだを行き来する中で、裴文宣は何度も選択を迫られます。寒門出身だからこその弱さと強さが見えてきます。 -
歴史ドラマとしての見どころ
実在の時代を描いた作品ではありませんが、「寒門宰相」という歴史的なイメージを重ねると政治パートがより興味深く感じられます。
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